F&Aレポート

わくわく日本語講座7 ~「二重敬語」は天皇や皇族に対する表現だった

わくわく日本語講座7 ~「二重敬語」は天皇や皇族に対する表現だった

 ことば遣いの中でも最も難解なのが、「敬語」と言ってもいいでしょう。最近では社会人になってしばらく経つ人でも、「敬語に自信がない」という人は少なくありません。

 そもそも、学校や家庭で敬語を使うシーンは極端に少なくなっているように感じます。そのため、社会人になって急に「正しい敬語を使いなさい」と言われても戸惑うのは当然のことです。

 間違って使われている敬語の中で、最も多いのが「二重敬語」です。たとえば「この映画は、ご覧になられましたか?」と言えば丁寧な表現のように聞こえますが、これは「二重敬語」です。「見る」の尊敬語が「ご覧になる」であるのに、その一部の「なる」を「なられる」としているので、尊敬語が重複しているわけです。この場合、「この映画は、ご覧になりましたか?」が正しい敬語の使い方になります。

 丁寧さが増すのは良いことと思う人もいるかもしれませんが、実は、二重敬語は「最高敬語」とも呼ばれ、元来は、天皇や皇族に対する時のみ用いられる表現だったのです。そんな表現を一般に用いるのは、丁寧というよりも誤りということになります。

 ここでよくある「二重敬語」をご紹介します。「お~~になる」「ご~~になる」は、それ自体が尊敬表現なので「られる」はつけません。

×「おっしゃられる」     ○「おっしゃる」
×「なされる」        ○「なさる」
×「お召し上がりになる」   ○「召し上がる」
×「お越しになられる」    ○「お越しになる」
×「ご覧になられる」     ○「ご覧になる」
×「お話しになられる」    ○「お話しになる」
×「お聞きになられる」    ○「お聞きになる」
×「お読みになられる」    ○「お読みになる」
×「お休みになられる」    ○「お休みになる」

 動詞部分だけを見ると、イメージしづらいかもしれませんが、
「田中様がお見えになられました(おいでになられました)」
などという言い方は、社長秘書などの立場にある人でも、つい使ってしまっているのではないでしょうか。

×「山田さんの結婚式には、ご出席になられますか?」
○ 「山田さんの結婚式には、ご出席になりますか?」
×「その件については、すでにご依頼になられましたか?」
○ 「その件については、すでにご依頼になりましたか?」
というようになります。

 その他、こんなことば遣いも注意しましょう。

×「~~社長様」
 社長(部長、課長なども同様)自体が敬称ですので、二重敬称になってしまいます。
「社長の~~様」、「~~社長」が正しい表現です。

×「~~は退社しました」
 退社は会社を辞めることなので、帰宅した場合は「帰宅しました」になります。

×「お世話様です」
 「ご苦労様です」というねぎらいの意味が含まれるので、目上の人や社外の人には失礼になると言われています。「お世話になっております」または「お世話になります」が適切です。

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