「おかあさん」の呼び方
写真を撮るときの掛け声で、「おかあさんの笑顔を思い出して!」というと、なぜかいい笑顔になるという話を聞いたことがあります。
さてそんな中、母親のことを「おかあさん」と呼ぶのはなぜでしょう。語源は、「北(きた)の方(かた)」という言葉にあるそうです。平安時代には、上流社会の奥方が住んでいた場所が、寝殿造の北の方向にあったので「北の方」と呼ばれていました。その後「北の方」に、敬語の「御」をつけて「おかたさま」と呼ぶようになりました。
これが江戸時代の士族の間で「おかかさま」となります。町人の間では「おっかあ」「おっかさん」と変化します。
「おかあさん」が一般に広がったのは明治初期。「尋常小学読本」に、挨拶を教えるために「オカアサン、オハヨウゴザイマス」「オカアサン、オヤスミナサイマセ」と、朝晩の挨拶が記載されたことがきっかけだそうです。
ところが、明治政府は「階級によってちがった言葉を子供に使わせるのはよくない」とし、「おかかさま」「おっかさん」の中間をとった「おかあさん」を、明治36年、国定教科書に載せて統一することにしたのだそうです。(参考 NHK気になることば)
最初は「なじみがない、てれくさい」など、「おかあさん」という言葉を、面と向かって自分の母親に言えない人も多かったようです。
母親を指す言葉には「おふくろ」や「ママ」もあります。「おふくろ」というと、今では男性がカジュアルな場面で使う言葉のようですが、尊敬語として鎌倉時代から使われていました。語源は「御袋様」です。
幕府の武士や貴族の間では、主人の妻を「御袋様」と呼んでいました。これは「お金など大切なものを入れる袋」を取り仕切っていたことからできたという説が有力です。
この時代から、財布の紐は女性が握っていたということです。母親を呼ぶ言葉、いずれも親しみと敬意がこもった呼び方ですね。