F&Aレポート

「口約束」と「指切りげんまん」

慶事の忌み言葉

 世の中に「口約束」ほど、不確かなものはないかもしれません。覚え書きや契約書などを交わさない約束は、つい軽く考えてしまいがちになります。

 たとえば、小銭を借りて返すのを忘れる、あとで連絡するという約束を反古にするなど。それだけに、口約束を守れる人は、律儀な人、信頼のおける人という印象を与え、好感度が高まるという話も聞いたことがあります。

 口約束といえば「指切りげんまん」。子供の頃、「指切りげんまん、針千本の~ます」と、小指を絡ませて歌ったものです。可愛い遊びと思いきや、重い歴史的背景があります。

 「日本人の数のしきたり(飯倉晴武 編著)によると、「指切りげんまん」の指切りは、遊女が客に不変の愛を証明するために、小指を切ったことに由来するといわれます(遊女は、小指から流れる血で証文を書いていました)。

 また、「げんまん」は「挙万」と書き、約束を破ったときは拳骨(げんこつ)を一万回くらわせる制裁を意味するのだそうです。その上でさらに「針千本」を飲ませるのです。裏切り者には、徹底して報復すると宣言をしているわけです。

 「指切りげんまん」は、江戸時代から子供達が歌っていましたが、「針千本飲ます」のあとに「死んだらごめん」というひと言が続いています。ますます、重いですね。命がけの口約束です。つまり、「死なない限りは約束は必ず守りますよ」ということを宣誓していたわけです。

 子どもの遊びの中で約束を守ることの大切さを学んできた「指切りげんまん」。由来を知ると、日本人の潔ささえ感じられます。たかが口約束、されど口約束なのですね。