フィンランドの小学校教育~3つの理由を述べる
「なぜ、そう考えたのか?」と聞かれて、「ただ、なんとなく」と答えるのは、最も論理的でないといえます。論理的とは「わかりやすい」ということです。誰が聞いても「なるほどね、その理由ならそう考えるね」と、理解できるのが論理的なのです。
世界的に見ても学力が高いと言われるフィンランドでは、小学校の教育プログラムに論理的に話す訓練が組み込まれています。論理的に伝えることは、コミュニケーションを豊かにすることだからです。国籍、習慣、言語の違いを越えて理解し合うには良質なコミュニケーションが欠かせません。
そこで、フィンランドではさまざまなコミュニケーション訓練がされるわけですが、これが「考える力」を伸ばしていると言われています。考える力は訓練によって鍛えられます。今回は、実際に研修や講義の際にケーススタディとして用いた訓練をご紹介しますので、興味のある方は、ご自身で考えるだけでなく職場や家庭などで、周囲の人に投げかけてみてください。論理的に話す訓練だけでなく、意外な答えが返ってきたり、その人の知られざる一面が見えたりするなど面白い発見があると思います。
<問い>貴方の人生において、最も大事だと思うものを下記の中から一つ選び、その理由を3つ述べなさい。ただし「結論→理由3つ→結論」の順に述べてください。
■莫大なお金
■絶世の容姿
■最高の友情
ちなみに、これまでこの問いかけをした際に得られた回答をご紹介します。
(1) 結論は「莫大なお金」です。一つ目の理由は、お金があればたいていなんでもできます。人助けもお金があればこそできるものです。二つ目の理由は、絶世の容姿もある程度、お金で手に入れることができます。整形手術やエステなど。三つ目の理由は、お金があれば人も情報も集まってきます。以上の理由から、私の結論は「莫大なお金」です。(50代 主婦)
(2) 結論は「最高の友情」です。一つ目の理由は、いくらお金があっても心を許せる友人がいない人生はつまらないと思うからです。友情は喜びを2倍に、悲しみをに2分の1にしてくれます。二つ目の理由は、友情には年齢は関係ありません。年上、年下、子ども、お年寄りでも世代を越えて友情を育むことができます。人生を豊かにしてくれます。三つ目の理由は、友情は昨日、今日ですぐできるものではなく一生かけて築いていくものだと思うので価値が高いと思います。この3つの理由で私は「最高の友情」だと考えます。(20代 男性)
(3) 結論は「絶世の容姿」。「絶世の容姿」があれば自信がもてます。次に、チヤホヤされて得することが多いからです。さらに、「絶世の容姿」があれば、お金は貢いでもらえると思うからです。以上、私の結論は「絶世の容姿」です。(10代 女性)
いかがでしょうか。学校、講座などあらゆる世代の人を対象にトレーニングしましたが、だいたいどこのコミュティでも7割の人が「お金」、2割が「容姿」、1割が「友情」という結果でした。上記以外にも「友情は裏切られるから、お金の方が信用できる」「3つの中で友情だけは、相手があるものだからこそ価値がある」などという回答もありました。
最後に3つの理由の考え方としては、消去法で考えるというやり方もあります。「お金はなくなる、容姿もなくなる、友情はなくならない」など。
これは明確な理由を考えるという訓練と、話を「結論、理由、結論」で組み立てる訓練にもなります。また、お互いの価値観の違いを知り認め合うことの重要性を体験する訓練にもなります。