年越し蕎麦に託された思い 正月の挨拶
今年も一年お世話になりました。年越しから元旦にかけてのしきたり。意味を知れば、当たり前のこともより深く感じることができます。どうか良いお年をお迎えください。(日本人礼儀作法のしきたり 飯倉晴武監修)
★年越し蕎麦に託された思い
大晦日、年越しの夜。除夜の鐘を聞きながら家族みんなで食べる蕎麦。それが年越し蕎麦です。この風習は江戸の中期、元禄のころから始まったといわれています。蕎麦を食べることによって「蕎麦のように細く長く幸せに生きる」という延命長寿、さらに江戸の薬用植物の本に「胃腸をきれいにする作用あり」と書かれていた蕎麦で、五臓六腑汚れを取り、無病息災を願ったといわれています。
また、江戸の金銀細工の職人たちが、仕事場に飛び散った金粉を蕎麦の団子にくっつけて集め、団子を焼いて金粉を取り出したことから、「蕎麦は金を集める」という縁起になったともいいます。いずれにせよ、大晦日の夜は終夜、眠らずに過ごすことが一般的だったため、簡単に用意できる蕎麦はぴったりの食べ物だったのです。
蕎麦に薬味として添えられるネギも、「労ぐ(ねぐ)」(労をねぎらう)「祈ぐ(ねぐ)」(祈る)などに通じるとことから、旧年の労をねぎらうとともに、新年への祈りが込められていたともいいます。
★正月の挨拶
「正月」とはもともと中国から移入された言葉で、「太陰暦の第一の月」という意味です。現代の正月は、一月一日の午前0時から始まると考えるのが一般的で、0時になったとたん、挨拶は「あけましておめでとう」になります。この「おめでとう」の言葉を口にすることが「お正月になった」というあらたまった気分にさせてくれます。本来、日本の正月行事は、公家の社会と密接な関係にありました。朝廷では天皇が四方拝を行い、国民の一年の安寧を願い、武家社会では元日を年賀の日と定めて家臣に忠誠を誓わせました。この年賀のしきたりが年始回りとなり、年賀の誓いが年賀状になったといわれています。