アサーション 職場で役立つ面接技法 「自分のことだけ」の部下を「戦力」に変えるアプローチ
■ 「上司に恵まれる」とはよく言いますが、部下にも”当たりハズレ”があるもの。やる気に満ちて、一を言えば十やってくれる部下を引き当てるのは、それほど簡単なことではありません。命令ができる立場とはいえ、言う事をきかない部下を扱うのはストレスになります。■下手をすると部署の雰囲気を壊してしまいますし、働かない部下の管理責任を問われることもあります。もちろんパワーハラスメントにも気をつけ、自主的に仕事をするよう仕向けなくてはなりません。そんな困った部下を持ったときの対処法を、日本産業カウンセラー協会理事の岡田敏雄氏に解説していただきました。(参考資料:日本産業カウンセラー協会 JACO産業カウンセリング1月号)
1.「給料分しか働かない」という強い信念?
「私が部下を持ったときに困ったなと感じたタイプの一つが『自分のことしか興味のない部下』でした。グループ全体のことは眼中になく、私の仕事はここまでと決めていて、それ以外を受け付けません。周りの社員からは『何を頼んでもやってくれない。どうすればいいのでしょうか』という相談が上がってきたりします」
このタイプの人物は、そもそも出世しようという意欲が感じられません。むしろ仕事は仕事、プライベートはプライベートと分けており、『給料分しか働かない』という強い信念?を持っているそうです。
2.まずメリットを示す
このタイプにやってしまいがちな誤った対処法は、説得を試みることです。「職場だと胸襟を開かないからと、お酒を飲みに連れて行って説得しても、まず無駄に終わります」と岡田氏。社会的行動や社会的属性の影響を受け、長い時間をかけて獲得したアイデンティティです。簡単には行動パターンを変えることはできません。
だからこそ、当人の意識を変化させるのでなく、当人の視点から見たメリットを伝えるのです。たとえば「あなたに依頼している仕事は、Aさんの持っている情報を有効に使えば効率が上がるよ、知ってた?」とたずねます。当人は9~5時で楽に仕事をしたいと思っているので、こうした情報は大きなメリットになります。
このタイプの部下は自分のことしか考えていないため有益な情報を知りません。いわば井の中の蛙。さらに、このタイプの社員と協力できることで、他の社員にもメリットがある場合は、「Bさんがあなたの仕事に、こんな風に協力できると言ってるけどどうですか?」と尋ねるのも効果的。上司の立場から全体に関わるメリットをしっかり伝えることが重要。
ただしメリットを伝えたからといって、いきなり他人と協力的に働き出すわけではありません。とにかく頑固なのがこのタイプの特徴でもあります。
聞いて動かないなら、体験から理解させることも重要。同僚との協力が絶対的に必要な仕事を振ることで、協力するメリットを肌で感じ取ってもらう作戦です。ただし、「えー、なんでこの仕事を私がしなければならないのですか」などと質問されるのは覚悟しておきましょう。
そのとき、思い出してほしいのは「給料分しか働かない」という部下の信念です。これは裏を返せば給料分だけは働くということ。そこをついて「じゃあ、今やっている仕事のコレを外しましょう。それで仕事の総量は変わらないでしょう」と、切り出してみましょう。しぶしぶでも仕事の範疇だと認めて、同僚と協力しながら仕事をするようになればしめたものです。
3.最後の手段は評価を下げる
さて、ここまで手を施しても変わらない場合は、「評価を落とす」しかありません。評価を落とせばたいてい「どうしてですか」と尋ねてきます。当人は、給料分はしっかり働いていると思い込んでいます。金銭的にもシビアで、残業を15分単位でメモしていることもあります。評価が下がればボーナスなどにも響いてきます。それは当人にとっても驚きで許せない状況だということを理解した上で、「理由を問われたら、他の人と協力できない仕事ぶりでは評価できない」とはっきり伝えるべきです。そのことにショックを受ける人もいますが、メンタル不全でない場合、8~9割の人がここで態度を改めます。
もちろん自分の価値観や人生観が出来上がっているケースや、年齢を重ねている人の中には改善を期待できない場合もあります。それでも多少とも変化する可能性があるのです。