年の瀬は商売繁盛の御守り「熊手」を新調する時期です。大きな熊手でお金をかき集めるイメージが先行するせいか、「かきいれどき」を「掻き入れどき」と、勘違いしてしまうのですが、正しくは「書き入れどき」。江戸時代の商人たちが売上も支出も増え、帳簿に「書き入れる」作業で忙しかったことから「書き入れどき」と言われるようになりました。
今回は語源を知ることのメリットと、商人文化から生まれた今に生きる言葉をご紹介します。
語源を知るメリット
- 言葉の理解が深まり、使い方が正確になる
- 記憶に定着しやすくなる
- コミュニケーションが豊かになる
- 説明力、語彙力が上がる
- 誤用を避けられる
- 文化、歴史への興味が広がり、理解が深まる
- 表現が洗練される
* 語源を知ることは、『言葉を深くつかいこなす力』を育てる知的な近道です!
商人文化から生まれた言葉
江戸〜明治にかけての商人の言葉遣いや商習慣から、現代に残っている言葉はとても多く、「商売の知恵」も詰まっています。
- 「棚上げ」語源:帳簿や品物を棚に上げて、いったん勘定から外すこと。
→本来は『一時的に保留する』のニュアンス。 - 「へそくり」語源:商家の奥様が『ヘソ』という糸で、こっそり作った小銭入れ。
→隠し貯金のことを言うようになった。 - 「どんぶり勘定」語源:商人が大きなどんぶり鉢にお金をざっくり入れていたこと。
→細かく管理しない大雑把な経理を言うようになった。 - 「相殺(そうさい)」語源:商人同士の『かけ(掛け取引)』をお互いに消し合うこと。
→現代の経理の「相殺」と同じ意味に発展。 - 「手形」語源:もともとは「手形=手の形の印」を押す証文。
→商取引の信用証明として、今の金融の用語へ。 - 「千客万来」語源:商家の軒先に掲げた「客が千人、万人来ますように」の願い札
→商売繁盛の象徴になった。 - 「重宝する」語源:商人が「重く扱う宝=大切な品」という意味で使った言葉
→便利で価値があるものを『重宝』と呼ぶようになった。 - 「割に合う」語源:商売の損益計算。利益(割)が費用に見合うかどうか。
→割に合う、合わない。
「お金、信用、在庫、交渉」など、ビジネスの知恵が言葉になったもので、今でも使われる実用的な言葉ばかりです。
