- トモコさんの哲学に、「どう思われているか」ではなく、「自分はどうありたいか」に軸足を置く。というのがあります。万人に愛されるのは不可能。それにいったん「この人はこういう人」と思うと、滅多なことで評価を変えません。まして、その他人が自分を幸せにしてくれるわけでもないのだと。「こうありたい自分」に近づく努力をする方がずっと幸せに生きられると。
- トモコさんの本を読んでいると、仕事の中で成長することと、「自立」=「自律」することが、自分も他人も幸せにすることに気づかされます。前回に続いて、トモコさんのワーク&ライフをご紹介します。(101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え 堀野智子著 ダイヤモンド社)
お客様から叱られることで「コミュ力」が高まる
当時、電話交換手には、点(トン)と線(ツー)を組み合わせた「モールス信号」をマスターすることが奨励されていました。試験に合格すると、月々のお給料のほかに「手当」がついたんです。
新しいことに挑戦するのに目のない私なので、一生懸命勉強して試験に合格し、晴れて手当てがもらえるようになり、就職して二年が過ぎたころには「監督」と呼ばれる立場になりました。今でいう「グループリーダー」ですね。
すらっと並んで座った「交換手」の背後に立って、対応に困っている人をサポートする役割です。スムーズにつながらず、お客さんが怒り出すこともしばしばありました。そんな時に交換手に代わって、「申し訳ございませんでした」などとお詫びをするのです。上手に対応して怒りを鎮めてもらうのがグループリーダーの重要な役割のひとつでした。
嫌なことを引きずらないたった1つのコツ
あのころ、毎日どれだけ見知らぬ人からのお叱りにお詫びを言い続けたことでしょう。私のコミュニケーションの能力は、仕事をすることで、否が応でも磨かれていった気がします。理不尽だと思うこともありました。だからといって、不快感をずっと引きずるのはつらいものです。第一、誰も得をしません。
結局、割り切って「忘れてしまう」のが一番。夜になったら寝て、翌朝起きたら忘れている。その繰り返しです。ものごとを割り切る力も、その頃に培われたのかもしれないと、今になってみれば思います。
人間関係は近過ぎず、遠過ぎずが一番いい
長く仕事を続けてこられた理由の一つには、「人との距離が、近過ぎず遠過ぎずだったから」があるのかなと思います。
人と人との距離は、よく「ハリネズミ」に例えられます。近すぎるとお互いを傷つけ合う、という意味です。
過剰に相手のことを知ろうとせず、今、自分が相手に差出せるものを惜しみなく差し出す、、、そんな風にしていたら、おのずと人間関係はうまくいくのではないでしょうか。
健康と幸福感の5条件
私は2024年4月9日に101歳になりましたが、この歳まで病気らしい病気をしたことがありません。血圧も血液検査も基準の範囲内です。健康体に産んでくれた母には、とても感謝しています。「長生きの秘訣は?」と、よく聞かれますが、私が思うに次の5つが心身の健康につながっていると思っています。
- 仕事を通じて自分が必要な存在だと感じられる
- 人との交流を絶やさない
- 規則正しい生活をする
- 日々の楽しみを持つ
- 暗いことを考えない
私は、とりあえず乗りかかった船には乗ってみる派なんです。主人と勧められるまま結婚し、あまり好きでもない生命保険のセールスの仕事もしました。どれもこれも、自分がどうしてもやりたくてやったことではありませんが、一つだけ自分の意思でつかみ、離さなかったものがあります。それがポーラ化粧品のセールスレディの仕事です。戦前、戦後と日本が暗い時代に突入した中、私はポーラ化粧品にどれほど心を奪われたでしょうか!