F&Aレポート

「心理的安全性の高さ」と「生産性の高さ」は比例する2

「心理的安全性の高さ」と「生産性の高さ」は比例する2

 「心理的安全性」とは、職場で誰に何を言っても、どのような指摘をしても、拒絶されることがなく、罰せられることがなく、罰せられる心配もない状態のことをいいます。従業員同士が仲のいい状態、ざっくばらんに冗談を言い合えるような状態だと捉えられることもありますが、そのような状態とは少し異なります。「空気を読む」という日本的な仲の良さとは相反する側面があるのです。

 前回に続いて「心理的安全性」についてまとめてみました。(jinjibu.jp参考)

1、リーダー及び、人事がおさえておきたい心理的安全性の意味

 心理的安全性は単なる仲の良さや、一致団結して仕事に打ち込むことができる雰囲気とは少し異なる意味を持っています。また、「会議での発言は自由に行うこと」「誰の意見も否定しないこと」というルールを定めることでもありません。

 心理的安全性とは、誰にどのような発言をしても罰せられないという「ルール」が存在することではありません。誰にどのような発言をしても罰せられない「雰囲気」「暗黙の了解」のことをいうのです。単に「ルールを決めること」と誤解しては、本来の目的からかけ離れてしまう恐れもあります。

「心理的安全性」という言葉を最初に組織論で用いたハーバード大学 エドモンドソン教授は、「心理的安全性」を次のように説明しています。

A shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking.
(このチーム内では、対人関係上のリスクをとったとしても安心できるという「共通の思い」)

 チームに上下関係があったとしても、誰もが気づいたことを発言できる雰囲気があれば、学びの機会も増え、それだけ業績が上がりやすくなります。もちろんそのような雰囲気を作るためには、ある程度の仲の良さがなければ難しいでしょう。心の内を打ち明けて、チームが崩壊してしまっては元も子もありません。

2、ハラスメント予防にも効果

 心理的安全性は、「情報交換がスムーズになる」「多様な能力を持つ人間が集まりやすくなる」「やる気や責任感のアップ」「ハラスメントが起きにくい」という組織づくりができます。
 たとえば、心理的安全性がある職場=多様な価値観が認められる職場は、議論が深まりやすいという特徴があります。特に新しい考え方やサービスを生み出すときは、同じような価値観を持つ人間同士が話し合うよりも、異なる価値観の持ち主が自由に話し合うことの方が重要です。

 さらに、個人レベルのコミュニケーションが円滑になると、やってはいけないことをやってはいけないと発言することもできるため、パワハラなどのリスクを軽減することができます。同時に仕事に対する責任感や関心が生まれ、積極的に業務に取り組んでもらいやすくなります。

 一般的に、メンバー間の関係性が良い場合、新しい人が入りにくいという側面もありますが、心理的安全性の高い組織では、立場の低い人も自由に発言することができ、仲間に入る心理的な障害が比較的低いとされています。安心して自分から発言し、積極的に参加することが許されるだめ、メンバーの一人ひとりのやる気も上がります。

3、心理的安全性を職場で活用するために

 心理的安全性が組織やチームに浸透していくために最も重要なのは、仕事の内容や組織の形態にかかわらず、リーダーの意識です。リーダーが心理的安全性とは何か、それを活用してどのような組織にしたいのかというビジョンを持つことで、チームが向いている方向性が共有されやすくなり、メンバーも働きやすくなるからです。繰り返しになりますが、単にルールを作って終わりではありません。また優しいぬるま湯的な雰囲気のチーム空気を読むあまり発言が控えられるチームになってしまわないようくれぐれも注意すべきです。