F&Aレポート

テレワークがもたらしたもの コミュニケーションを「増やす」のではなく「見せる」工夫を 2

 テレワークで失われるのは「メタ知識」の共有ができないこと。「メタ知識」とは総合的な知識で、単なる情報伝達ではない「組織の相関関係や全体図」のようなものです。テレワークを活用しながら、どうやって「メタ知識」を共有するのか。コミュニケーションを「見える化」するにはどうしたらいいか。前回に続いてレポートします。(参考:JAICO 一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 特集「リモートワークがもたらしたもの」)

1、コミュニケーションの「見える化」のすすめ

 「1:ツール」「2:ルール」「3:ログ」

 ICTツール(情報通信技術)は情報を「見せる」ためのインフラと考え、チャットツールでもSNSでも使えるものは積極的に投資し続ける。ただし、ツールを入れただけでは機能しないので、その使い方について組織やチームで「ルール」を策定し、自組織に合ったコミュニケーションのやり方を決めることが大事です。  また出社奨励の曜日や日にちを決めたり、まだらテレワークで会議をしないように一律WEB会議または対面の会議とする、WEB会議では必ず「顔出し」をする、などのルールも有効です。さらに「ログ」、つまり記録をオープンにして「見せる」。定例会議の議事録があれば、遡ってその内容の確認ができますし、組織内で既知の情報が何なのかをメタ認知することにもなります。新人が入ってきたときにも、ログを見れば仕事の関係性の地図を更新できます。社内コミュニケーションのログは「関係性の足跡」になるわけです。

2、コミュニケーションを「見える化」する4つの方向

 「ヨコ」「シタ」「ナナメ」「ソト」

 コミュニケーションを見えるようにする方向は「ヨコ」「シタ」「ナナメ」「ソト」の4つがあります。

 「ヨコ」は管理職同士が職場でおこっている問題や、部下へのフィードバック・評価などについて話し合う場を定期開催し、「ヨコ」のマネジメント力を強化すること。

 「シタ」は上層部のコミュニケーションを下から見えやすくすること。日本企業は上層部で正解らしきものを決め、それを単に下へ伝えればいい、というコミュニケーションモデルがまだまだ一般的です。この「御触書モデル」のようなコミュニケーションをオープンにして見えやすくすることが大事です。

「ナナメ」は、上司~部下関係「以外」のメンタリングや面接をセットすること。1on1だけではメタ認知が増えません。「メンターのこの先輩はこう言っているけど、別の先輩の別のやり方もあるな」、といったように人は多角的に仕事を覚えていきます。

 1on1から2on2、1on2、ななメンター、社内カウンセリング機能の活用などを増やしていくのが「ナナメ」です。

 あとは「ソト」からも見えるようにする。新人や異動者には、部署の「ソト」にも開いたオンボーディングをして社内のネットワークに埋め込む。部内での歓迎会や現場でのOJT、教育係をつけることに意味がないわけではないのですが、人が自分の役割を見極めるときや、仕事のやりがいを見極めるときには、「外」の目線で見ることで「自組織」に馴染むのが早くなります。

 「ナナメ」「ソト」としての役割に外部専門家も期待できます。答えを与えようとするのではなく、アドバイスの求め先をいかに増やしてあげるかが重要になるのです。「繋がりが大事」なのは間違いないのですが、ただ「繋がってください」と言っても人は繋がりません。社会関係資本の構築には何かしらのフックが必要です。目的やテーマを軸にして人を集め、そこで偶然的かつ自発的に繋がってもらうという場を設定することが効果的です。今なら「リスキリング」というテーマが最適でしょう。新しい学びやスキル開発を目的に人々を集め、それによって繋がりを深めることができるのではないでしょうか。

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