「固定電話恐怖症」という病
以前、こちらのレポートでも電話に出られない新入社員について書かせてもらったことがあります。それは、私が新入社員研修をしていた時の実体験からまとめたものでした。
電話が苦手だという新入社員に「なぜ苦手だと思うのか?」と尋ねると、「知らない人と電話で話したことがないから」と、彼は答えたのです。物心ついたときから携帯電話があり、電話はダイレクトに友人につながるツール。しかも、通信手段は電話ではなく、圧倒的にメールやラインが中心。電話をすることはほとんどないというのが、彼の言い分でした。お店の予約や問い合わせも、ほとんどがネットなので、本当に知らない人と電話で話すことなんてほぼ皆無なのです。
そんな若い世代の人に、これまで通りの電話応対研修をしてもあまり効果は期待できないかもしれません。「固定電話」という未知なるものの扱いや、注意点、物の言い方など、しっかり理解してもらい、さらに、見知らぬ人とのあらたまった会話に対応できるよう実践練習も必要になります。
しかし最近では、こんな症状を「固定電話恐怖症」と呼ぶのだそうです。きちんとした名前(病名)がつくということは、珍しいケースではないということなのでしょう。
社会人になってはじめて「固定電話」をつかい、しかも「知らない人」とビジネス会話をするわけです。若い人にとってはかなりハードルが高いビジネスツールです。上司はそこを踏まえた上での指導が必要になるのでしょう。まずは、自社の名前を名乗ることや、「お世話になっております」などの常套句がさらりと口をついて出るようにロールプレイングを繰り返してみましょう。少しなれたら、内線電話から実践を踏んでみましょう。また、聞き取れないときの対応や、クロージングなどを練習し、「一日3回は受話器をとる」など、小さな目標から段階を追ってこなしていきましょう。本人も周りも「恐怖症」という言葉を忘れるほど自然に対応できるまで、辛抱強く関わっていきたいものです。