F&Aレポート

ロボットから見る時流把握

織田健嗣追悼レポート 2003年4月9日号より
~ロボットから見る時流把握~

1.時代はアトムに追いついたのか?
 昭和26年、月刊雑誌「少年」から手塚治虫のもとに連載依頼の手紙が届いた。「科学の進んだ話を・・・」と、手塚治虫は昭和27年「鉄腕アトム」の連載をスタートさせた。アトムは人間と同じ心を持つロボットであり、正義の味方である。時代を50年後の2003年に設定した手塚治虫の想像する未来の日本と宇宙が描かれた。発達した電気機器や通信技術に、未来都市は、当時の日本からは、夢物語のようなまさに想像を絶する、どこかよその星のお話のように感じられたに違いない。しかし、この夢物語はやがて、日本だけでなく海外の子供達にも未来への希望を与えることになった。夢先案内人アトムが見せてくれた世界は、今私たちの日常として現実のものになっているが、果たして時代はアトムに追いついたのだろうか?

2.アトムに見る近未来図
  2003年4月7日、アトムが再び誕生の瞬間を迎えた。そして、 4月からは、新作TVアニメーション「アストロボーイ・鉄腕アトム」が放映される。長い眠りから目覚めたアトムの世界がどんなものか、おおまかに覗いてみたい。
●科学省
科学全般を統括する日本の中心頭脳ともいえる組織。最初は天馬博士が長官だったが、天馬博士失脚(逃亡)後、お茶の水博士が長官となった。精密機械局や調査局などがある。霞が関の一角にあると考えられるが、「科学省調査局第1調査部第14調査課No.2第306調査室」が登場することから科学省の規模の巨大さがうかがえ、霞が関の一角ではおさまりきれないことがわかる。21世紀の科学の最高峰だが、その屋上には小さな祠が祭られている。

●空中スキー
普通のスキーと同じように乗って空中を飛ぶことができる。スキーの先端は無線電話。
●クジラ牧場
大富豪ロボットの経営している牧場。目的は年々絶滅していくクジラを保護して増やすため。
●人工衛星
人工衛星では普通の人も生活しており、そこに住む人は人工衛星人と呼ばれた。
●テープはがき
コンパクトディスクのような形で、音声が流れる装置。電話、手紙以外の伝達方法。
●ロボット人権宣言
ロボット人権宣言ロボットに人間と同等の権利を与えるという宣言。
●ロボット流し
8月15日、各家庭では故人そっくりのロボットを家に迎えて故人を偲ぶ。 ロボットは家族と3日間過ごし、その後、川へ流される。この日を「思い出の日」と呼ぶ。
●若返りガス
隕石の中に含まれるガスで、そのガスには細胞を若返らせる驚異の力がある。使用量 を間違えると若返り過ぎてしまう。

3.私たちが求めるものは「未来への扉」
 アトムが日本に誕生して半世紀が過ぎた。その間、メディアで伝えられるロボットも様変わりしている。昭和38年から41年までモノクロで放映されたアトムも昭和55年には、カラーで再び登場しているが、当時の子供達には「機動戦士ガンダム」などの人を乗せてボタン一つで動く、巨大ロボットの方が人気を博しており、人間と同格で特殊能力を持つアトムは興味の対象にならず、一年あまりで放送は終了している。また、昭和48年には、優等生のアトムとは対照的な、まぬけでお人好し?のロボット「ドラえもん」が誕生し、あのポケットから時空を越える様々な道具を取り出し、今も世界中の老若男女に夢を与えてくれている。(ドラえもんの本は聖書の次ぎに発行部数が多い)いずれにせよ、すべてのキャラクターに共通 するのは、「未来への扉」を開け放してくれることである。作家ハートリーは「未来は別の国なのだ。人々は我々と違ったやり方で生きている」と言い、SF作家アーサー・C・クラークは「進んだ文明は、魔法と見分けがつかない」と言う。折しも時代はイラク戦争のまっただ中、正義の味方「鉄腕アトム」が、この混沌とした世の中をどう切り抜け、どんな未来を見せてくれるのか童心にかえって期待するのも悪くない。(参考資料:朝日新聞)

現代のお掃除ロボット”ルンバ”なんて、現実的過ぎて夢がない?いいえ、機能的で美しく、誰もが簡単に操作できるロボットこそが夢です。ロボットと共存する未来は、目の前に!