税金の話

今年の確定申告2024年版

今年の確定申告で感じたことをちょっとまとめてみました。

1.定額減税が幅を利かす
まずは定額減税。
一人あたり3万円の国税を減税する特別減税措置により税額が0円になったり、減額するお客様がたくさんいらっしゃいました(住民税は令和6年度に措置済み)。
しかし、来年度の住民税には影響しないため、所得税0円なのに住民税を何万円も発生します。
制度的にも難しい制度であり、説明してやっと存在を認識したという方も多く、令和6年限りの制度で良かったです。
もっとも、来年になると、去年=令和6年分との比較を説明する際に、税額が増えた理由として、この定額減税の話をまたすることになりそうです。

2.消費税のインボイス
インボイスの計算は、昨年は10月からの3ヵ月だけでしたが、今年は12ヵ月の計算となりました。
この1年間で仕組みについてはほぼ理解が進みましたが、運用面ではまだまだ試行錯誤状態であることを感じました。

3.複雑な制度
税制がどんどん複雑になっています。
例えば、住宅借入金等特別控除制度。
認定住宅や若い世代の特別措置があり、控除される金額や割合が異なっています。
申告書システムも対応はしていますが、正確に入力する必要があります。
それ以前に、制度の内容を理解し、お客様の状況を確認しながらどの制度が選択可能なのかを判断する必要があります。
103万円の壁問題で、来年は所得税の控除がさらに複雑になりそうです。
少子高齢化対策などの目的で特典を受けられる人を限定する制度ですから、複雑になるのは避けられないのでしょうが、一般の方ではまず理解できない税制になってしまっているという現状があります。

4.マイナポータルとの連携
マイナンバーカードを持っていると簡単につながるマイナポータルを利用すれば、e-Taxに連携してスマホでも申告することができます。
税務署に行けばまずこちらを優先されるそうです。
簡単というのは良いのですが、現状では、税理士が一般的に利用するe-Taxソフト本体とはうまく連携ができていないようです。
やや専門的な話になるのですが、国税のe-Taxソフト上では、納税者が税理士に委任することができ、委任の結果、申告に関する情報を税理士も入手することができます。
例えば、お客さんの青色申告適用の有無や消費税、引落口座等の情報を入手することができます。
これらの情報は、正確な申告をするために非常に重要です。
国税のDX化が進み、マイナポータルを利用して簡単に申告できるようにするというのは国税庁の方針として理解できるのですが、税理士に依頼する納税者のこともちょっと頭に置いてほしいものです。
このあたりのシステム構築は国税庁と日税連がどこかで議論してるはずなので、来年の確定申告には解決されてると良いなと思います。

5.ふるさと納税
今年からふるさと納税の結果についてお客様に対して丁寧に説明するようにしました。
インターネット上にシミュレーションのコーナーはあるのですが、実際の確定申告と突き合わせする人は多くないかもしれません。
しかし、所得税と住民税上の控除を確認するためには、ある程度の税法の理解が必要なので、少し難しいところがあります。
ふるさと納税は税金が直接「還付」される制度ではなく「減額」する制度であることも、分かりにくいところです。
もっと早く説明しておくべきだったというのは反省点です。
なお、昨年から普及したふるさと納税に関するXMLデータを利用すれば、手作業はほぼ不要となりました。
ダウンロードも、昨年はリクエストして数日かかっていたのですが、今年は即ダウンロード可能になっていました。
ここはDXの良い面でした。

6.寒かった
後半戦の3月に入ると、春を感じることが多いのですが、それがなく寒い日が続きました。
寒さとともに頑張った確定申告でした。

7.結論
税理士の存在価値の一つは、複雑な税制を理解し、お客様の状況を把握して、正確な計算を行うこと、その結果について理解〜納得いただくことです。
2024/11/21の記事「税金は難しい」にも書きましたが、最近の税制の複雑化でこの部分はとても重要になってきています。
法律に基づくルールを勝手に曲げることができないのは当然ですが、制度面の特典は可能な限り利用して納税者の税額を軽減するための努力はすべきです。
ただし、税の軽減そのものは申告の最終目標ではありません。
今回の税額に到った「背景と過程」をできる限り分かっていただくこと、そしてその申告に後に続く経済環境や生活への変化も考えることが重要です。
税理士としては、税の話は当然として、その周辺にある様々な問題にも意識を向けることの大切さを感じています。
毎年のことですが、確定申告の奥は深いです。