税理士は税金に関わる専門的な仕事です。
以前は、税金の申告のために書類や数字をまとめたり、申告書を作成する仕事が主でしたが、最近ではお客様に申告の内容とその背景にある制度について説明する役割が大きくなってきました。
なぜ制度について触れるかと言えば、税額という結果だけでなく、制度上の選択肢やそのメリット・デメリット、そしてその過程と意思決定の背景を理解していただく必要があるからです。
しかし、税制はますます複雑化しており、制度の中身を理解することも、どの選択肢が最適かを判断することも非常に難しくなっています。
政府税制調査会という、今後の税制を議論する場を例に考えてみましょう。
以下は2024年11月19日の会議資料です。
https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/ebpm/2024/6ebpm2kai.html
資本金1億円以下の中小法人には、さまざまな特例制度が設けられています。ここでの議論では、その実効性や、減資を行って意図的に1億円以下にする企業の問題が取り上げられています。
おそらく、12月中旬に発表される税制改正大綱においても、何らかの形で触れられるでしょう。
税理士としては、このような議論にアプローチすることができるようになっています。
税理士会では毎年「税制改正建議」により効果的な提言を行うことができ、私もこのプロジェクトに4年間携わっていました。
単に提言だけでなく、税の体系としての問題、周辺制度との関係、効果の測定などなかなか難しい作業でした。
問題は、このように構築された税制が一般の経営者や消費者にどの程度理解されているかです。
「そのために税理士がいるんだろう?」という意見もあるかもしれませんが、それだけで十分とは言えません。
日本の税制を最終的に取りまとめる事務方は財務省と総務省(地方税は総務省です)ですが、私たち税理士が実務だけでなく税制についても深く理解し、お客様にもある程度理解していただくことが非常に重要です。
このコラムでは、税理士としての知見を深めるとともに、一般の皆さまにも少しでも税金について分かりやすく伝えたいという思いを込めて、専門的な内容に挑戦していきます。