人づくり~あなたは注意しますか?見過ごしますか?<助手席に座ってイヤホンで音楽を聴く新入社員>
「最近の人材育成は難しいですね。ちょっと注意をするとパワハラ呼ばわりされる。かといって、甘い顔ばかりもしていられないし、管理職は若い子以上に気を遣っていますよ。それでもなかなかうまくいかない。私の若い頃はそりゃあ厳しかったですよ。こんなことで人が育つんですかね」なんてボヤく声をよく耳にします。
以下は、実際にあった話です。あなたならどうするか考えてみてください。
それは、去年の11月の出来事でした。4月に入社してきた部下の佐藤君が、早朝から行う企業内研修に参加するため、上司の田中課長は自宅から車で、佐藤君の家まで迎えにいくことになりました。公共交通機関を利用するには時間も早く不便だったため、田中課長にはこの方法がベストと思われたのです。
研修当日の早朝、予定通り田中課長が自家用車で佐藤君の家まで迎えにいくと、佐藤君は「おはようございます」と挨拶をして、田中課長の車の助手席に座りました。すると、佐藤君はおもむろに鞄からスマホを取り出し、イヤホンを付け音楽を聴き始めたのです。
田中課長はびっくりし、ここで注意をすべきかどうか悩みながらハンドルを握りました。『車という狭い空間の中でいきなり注意をしたら、空気が悪くなるのではないか。朝から注意すると、研修を受講するモチベーションが下がるのではないか』などと、思いを巡らせるうちに、特に注意をすることもなく目的地に着きました。
どうしても気になる田中課長がその後、人事に事の次第を相談したところ、佐藤君は人事担当者から注意を受けることになりました。
さて、あなたならどうしますか?
<「人事にチクリやがって!」>
気を遣ってその場で注意をしなかった田中課長ですが、このケースだと佐藤君は「わざわざ人事に言うほどのことか?だったら、その場で直接言ってくれたらいいじゃないか。人事にチクリやがって、、、」と、逆恨みすることも十分考えられます。
多くのビジネスパーソンに実際に話をしてみたところ、下記のような意見がありました。どれが正解ということではなく、今後の参考になるかもしれません。
<その場で注意する>
上司がわざわざ迎えに来たのに、助手席で音楽を聴く、しかもイヤホンで聴くなんて論外!こういうことはその場でちゃんと指導するべき。それが本人のためにもなる。
<後日、自分から直接注意する>
人事には言わず、後日様子をみて注意します。「あのときは助手席で音楽を聴いていたけど、実はね、、、」みたいな感じで。人前ではなく、二人でいるときに話をします。人事に言うことで自分自身のマネジメント能力を疑われるのも嫌ですし。
<「何聴いているの?どんな音楽?一緒に聴かせて!」>
自らイヤホンを外すように仕向けたいのと、コミュニケーションの機会にしたい。どんな音楽を聴いているのか、どんなグループなのかなどを質問して、音楽を通じて本人を理解する機会にしたいと思う。
*世代による常識のちがい このケースは、入社して半年の佐藤君の常識と、田中課長の常識にズレが生じていることを物語っています。そのズレを修正しながら信頼関係を深めていけるのがコミュニケーションです。価値観、考え方、モノの見方など、世代間の違いをお互い埋めていく努力が課題といえるのかもしれません。