F&Aレポート

ゆっくり話すことの気品と風格

ゆっくり話すことの気品と風格

 オードリー・ヘップバーンの不朽の名作「マイフェアレディ」は、下町の花売り娘が教授と一緒に、発音、言葉遣い、アクセントなどの訓練を受けて、最後は上流階級の仲間入りをするというストーリーです。

 この映画からもわかるように、どんな言葉をチョイスし、どんな風に話すかは、人柄を表すだけでなく、目に見えない社会階級レベルを表しているといえるでしょう。

 現代社会では、どこに行っても「効率」を求められているためか、よほど注意しないと知らず知らずのうちに早口になってしまいます。また、大勢の前で話をするなど緊張すると早口になります。

 早口は、聞き手の理解度が低くなります。また、滑舌も悪くなるので聞き取りにくくなります。「え、今なんて言った?」ということが何度か続くと、聞き手の集中力は削がれてしまいます。結局、伝えたつもりになっているだけの自己満足で終わってしまうのです。

 ある調べによると、日本人の話す速度は昔に比べて速くなっているそうです。通常は一秒間に6~7文字(うんどうかい、てんきよほう、さくらなみきなど)のところ、一秒間に9~11文字(こうにんかいけいし、ジェイアールにしにほん、ないかくそうりだいじん)になっている人も多く、テレビやラジオでニュースを伝えるキャスターはもっと速い人もいるそうです。

 一般的に「早口で話す人は、頭がいい」(=頭の回転が早いから早口になる)という認識もあるかもしれませんが、時代劇などを見ても、早口なのは優秀な家臣だけで、真のリーダーはゆっくり話します。低音を響かせてここぞというときに口を開くため、心にズシリとくるのです。

 令和の時代を象徴する皇室の方々も口調は常にゆっくりされています。古今東西、エレガンスは「少しゆっくり」。ゆっくり話して気品と風格をまとってみませんか?