外国人と働き暮らすために 2
前回は、外国人労働者を取り巻く5つの壁<(1)政策的な壁 (2)定着の壁 (3)企業意識の壁 (4)日本語の壁 (5)多様性の壁>と、外国人のキャリア意識についてレポートしました。今回は、実際に日本で働く外国人や、日本で企業した外国人のインタビューをもとに、「外国人が働きたくなるポイント」についてレポートします。(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 産業カウンセリング)
外国人が働きたくなるポイント教えます
株式会社LIANBABY 代表 李佳霖さん(女性) 「スピード感について」
私は日本の大学を卒業して日本企業で7年以上働いていました。そのとき一番驚いたのは、目の前に座っているのに社内チャットで「Eメールください」と言われたことです。「話したい」と伝えたら、「いや、メールでください」と。履歴で残したい内容だったのかもしれませんが、時間がかかりますよね。もっとスピード感を持って仕事ができればいいのにと思いました。
スピードという点では、ビジネスがスタートする速度も中国と日本では違います。中国の会社は、話があれば直接トップと会話できます。そしてその場で決定します。プロジェクトリーダーはそこで決まりますから。
日本の会社だと、まず課長に言わないといけません。直接部長に言うとダメ。従業員30人程度の会社でも同じです。もちろん、中国でも課長や部長が上に話しを持っていくこともあります。ただ、そのときはメールがメインでスタッフから社長に報告するのに、2時間かかりません。何よりもスピード重視です。
日本企業で働いたとき、他に不思議だと感じたのは、同じ社内なのに部署ごとに資料が分かれていることでした。部署同士がオープンではないですね。部署が一つの独立した会社のように感じました。
日本的なプロセスを教える存在が大切
中国人が日本企業で長く働くかどうかのポイントは、信頼されて仕事を任せてもらえるかどうかでしょう。しかも中国人としての特性を活かせることにこだわります。かつて私は、不動産の法人営業をしていました。日本人の営業マンとまったく同じ仕事内容だったので1年で転職しました。日本人と同じ仕事内容だと、自分は日本語が下手なので、営業しても成功案件は少なくなります。日本の営業を学ぶためであれば一生懸命勉強しますが、私は中国事業に関わる仕事に興味がありました。
中国人は成長できる環境であるかどうかも重視します。成長がなく、毎月お給料が入るだけでは意味がないと感じるからです。給料のためだけに働いているわけではありません。自分の人生、自分の夢を考えながら働いているからです。
また、外国人が長く働きたいと思えるのは、自分の国の文化を理解してフォローしてくれる方がいるときです。かつて働いていた会社には、中国語を学んで中国にもよく行かれる、人柄も素晴らしい女性上司がいました。仕事がつらくても、彼女が細かくフォローしてくれたので長く務めることができました。その方からは、日本企業のプロセス(仕事の進め方)を教わりました。マナーや言葉遣いなどの言い回し、交渉の仕方などです。日本的なプロセスを教えてくれる方がいると、すごく外国人は働きやすいと思います。
中国人留学生の標準的なキャリアルート
日本の大学や大学院を卒業した中国人は、日本企業に就職して中国に帰国してステップアップするか、永住ビザを取得して日本で働き続けるといった夢を持っているひとが多いです。また、中国企業でも3年以上勤めたことを評価します。1年で辞めたとなると「何で辞めたのか」という話しになります。つまり、キャリアアップを考えている中国人も日本企業で最低でも3年は働きたいと考えているのです。日本に留学した中国人のほとんどが、帰国したときに日系企業に就職します。日本での経験を活かすには、日系企業が最適だからです。こうした標準的な中国人のキャリアルートを知っているのも日本企業には役立つかもしれません。私は今まで出会った日本人が優しく接してくれたのでラッキーでした。だから日本で起業できました。そのお返しができればと思っています。