言葉は品性と社会性をはかられるモノサシ
先日、電車を降りる際に若い女性にちょっと順番を譲ったら、「恐れ入ります」と微笑んでくれました。ただそれだけのことなのに、咄嗟に「ステキ!」と思いました。その後も、どこのお嬢さんなのか、きちんと育てられた女性なのだろうなどと、勝手に想像を巡らせてしまいました。最近はどこに行っても、ことばづかいでがっかりすることの方が多いので余計に新鮮で嬉しくなりました。
言葉は、その人の品性と社会性が表れます。たとえば、次の例を比べてみてください。
A「私って、いろいろ興味があって、最近流行のホットヨガとか、はまっています。自分磨きとかにも興味があって、話し方スクールにも通っています。けっこうがんばってます」
B「私は、好奇心旺盛で、最近はホットヨガを始めました。教養の為に話し方教室にも通っています」
AとBがどんなタイプの女性なのか、言葉からなんとなくイメージできます。Aは、元気がありそうで流行にも敏感ですが、どこか浅い感じがします。もしかしたら、なんでもすぐに飛びついて、飽きてしまうのも早いのかもしれません。Bは、知的で落ち着いた感じがします。押し付けがましい感じがなく、自分の意志で謙虚に歩んでいるようにも感じます。
同じことを言っているのに、AとBの違いは歴然としています。Bは上手に自己表現しています。しかし、難しい言葉を使っているわけでもなく、特段上品な言い回しをしているわけでもありません。さわやかに自己表現できる人は、決して「私が…私が…」と出しゃばらず、言葉をきちんと選びながら、気品を漂わせることができます。それはまるで、上質なコートを、長く丁寧に扱い自分自身と一体化させているような雰囲気にも似ています。
普段づかいの言葉や表現方法が、いざという大事なシーンでもそのまま出てきます。日頃から、言葉を選ぶ習慣を持ちたいものです。その人にピッタリ合った素敵なことばづかいは、いつまでも心に残ります。