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アベノミクスの光と影 [2013/7/16]

 昨日、久しぶりに友人とランチをしていて、息子さんが別の大学に入り直そうか悩んでいるという話を聞きました。彼の息子さんは薬剤師を目指して薬学部で勉強していますが、アベノミクスの規制緩和で薬のインターネット販売が解禁されることになり、薬剤師としての将来に大きな不安を感じ、社会的ニーズの高い医療技術系の大学に入り直そうと考えているそうです。同級生の間にも動揺が広がっているということでした。

 薬のインターネット販売解禁は、社会的にも経済的にも必要なことです。例えば、一人暮らしのお年寄りが増えている中で、薬を処方してもらうためだけにわざわざ通院することは大変なことです。インターネットとか電話で処方を依頼し、薬を宅配してもらえるようになれば非常に便利です。また、薬のインターネット販売解禁の次のステップとして電子カルテ情報の共同データベース化があります。カルテの情報をデータベースに登録し、受診した病院でそれを閲覧・入力できるようにすれば、セカンドオピニオンを聞くために同じ検査を何度も受ける必要はなくなり、医療費の削減にもつながります。

 このように長期的なメリットがある一方、薬のインターネット販売が解禁されれば、店頭で対面販売する必要性がなくなるため、ドラッグストアや薬局が必要とする薬剤師の数は大きく減少すると懸念されています。とすれば、薬剤師をされている方の雇用や薬剤師になることを目指している学生の将来はどうなるのか?そうした問題への対応について、政府の規制改革会議では議論されていません。

 TPPも同様の構図だと思いますが、規制改革を進めるためには、このような当面予想される問題についてきめ細かく対策を検討し、政治的リーダーシップを発揮していくことが自公政権には求められています。

酒井からのコメント

 大変興味深い話です。これって、弁護士と全く同じですね。改革を進めるのは良い。しかし、その結果、人生を誤ったと感じる人がいる。確かに、選択し、リスクを負ったその人の自己責任ではあるかもしれません。が、それだけなのか?そんなに簡単に片付けて良いのか?そのような問題が生じることを事前に認識していたならば、何らかの救済策を合わせて考慮すべきではなかったのか?政治は効率性だけを追求してはいけないし、当然思いつきで進めても行けないと思います。一方的な側面しか見ない政策の実行は、正しいとは思えません。


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