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猛暑が続いています。そんな中、7月〜8月の平均気温が1度上昇すれば第3四半期の実質GDPを0.1%以上押し上げるという試算が発表されました。ビール、清涼飲料、エアコン、衣料品などの夏物消費が増加する効果です。気象庁によると、7月の平均気温は例年を4度上回っていますので、このまま猛暑が続けば、かなりの消費拡大効果が期待できそうです。政府があれこれ景気対策を打つよりもラニーニャ現象で夏の気温が高くなるほうが経済効果は大きいわけで、人間の知恵なんて自然の偉大さには遠く及ばないということですね。
さて、参院選も終盤戦に入り大勢が見えてきましたので、政局の安定を前提にして、今後のマーケット見通しを考えたいと思います。最近の株価を振り返ると、5月23日の急落をきっかけに高値から20%調整し、1987年のブラックマンデー後に似た展開となっていますが、ブラックマンデーより戻りは早く、すでに下落幅の約3分の2を回復しています。今回の下げの最大の要因は米国の早期量的緩和縮小懸念なのですが、その背景に米国の雇用回復を裏づける経済指標が増えているという現象があり、結局、大した下落要因はなかったということです。
今後のマーケット見通しを考える上で最も重要な要因が米国経済の動向です。今年初めには、給与税減税廃止や高額所得者の所得税率引き上げなどが景気に悪影響を与えると懸念されていましたが、ふたを開けて見れば、住宅価格上昇による資産効果とそれに伴う消費拡大によって、雇用は順調に回復しています。最近の新規失業保険申請件数から判断すると、失業率は、来年春頃FRBが目途とする6.5%に到達する見通しで、そうなれば米国の金融緩和は終了することになります。これは日米金利差の拡大を意味しますので、ドル高円安要因となります。だだし、市場はこうした要因をあらかじめ読み込んで動きますので、今年末にかけて1ドル=107円程度までの円安進行が予想されます。
米国経済の回復に伴ってドル円相場が安定することは、日本の株価の上昇要因になります。さらに、9月7日、ブエノスアイレスで開かれるIOC総会で2020年夏季オリンピックの開催都市が東京に決定すれば、株価をさらに押し上げる要因となり、特に不動産関連株にはプラス効果が大きいでしょう。一方で、消費税が14年3月に3%、15年10月に2%それぞれ引き上げられ、これが消費のマイナス要因となる可能性には注意が必要です。
日本の金利については、円安・株高トレンドが続けばデフレ脱却観測が強まりますので、金利は上昇(債券価格は下落)することになります。ただし、金利の急激な上昇は、日銀が債券購入によって阻止するスタンスを明確にしていますので金利上昇ペースはゆるやかなものになそうです。現在0.8%台の10年国債利回りが2%に到達するのは3年〜4年後という見方が大勢です。
このように当面の金融マーケットは、政権の安定化と内外景気の回復に対する期待感から堅調に推移し、消費税引き上げは予定通り決定される見通しです。しかし、その後も株価上昇が続くためには日本の潜在成長率を上昇させる経済構造改革が不可避で、それにはかなりの痛みを伴います。そのため、改革の明確なロードマップを示すとともに、激変緩和措置を周到に用意することで、国民のコンセンサスを形成していくという非常に難しい課題を自公政権は負うことになります。
今の日本経済にとって最大の注目は、参院選後の経済政策がどのような方向に進むか?だと思います。
選挙直前には、消費税率引き上げは先送りしたという話も出ましたが、どのようになるでしょう?
おそらく、政治勢力は安定化すると予想されますから、政策上の意思決定プロセスには問題がなくなります。逆に言うと、言い訳ができないわけで、経済動向や市場の状況等々を見ながら、臨機応変な対応が取られることが望まれます。
税理士会も、税の理屈だけでなく、中小企業の状況からの政策提言をしたいですね。できれば、ですが。
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