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日銀の量的・質的金融緩和決定について [2013/4/7]

 4日に日銀が発表した「量的・質的金融緩和」は市場の予想をはるかに上回る内容と規模でした。そのポイントは2つあります。1つは、日銀が市場から買い入れる国債、ETFおよびREITの金額をいずれも倍増させること。もう1つは、国債についてですが、従来は満期までの残存期間が3年以内のものしか買っていませんでしたが、今後は40年の超長期国債まで幅広く買うということです。

 この発表を受けて、円安、金利低下、株高が進んでいます。5日に発表された米国の雇用統計は雇用回復の弱さを示す内容(円高要因)だったにもかかわらず、ニューヨーク市場では1ドル=97円台まで円安が進みました。また、日本の債券市場では10年国債利回りが0.315%と史上最低水準を大きく更新しています。

 今回の日銀の政策決定は私の仕事にも大きく影響することになりそうです。私は地域銀行でリスク管理を担当しています。銀行は預金で集めた資金を貸出金や有価証券(株式・債券など)で運用して収益を上げていますが、その中で、リスク管理が果たす役割は、運用資産のリスクとリターンを比較検討して、全体としてできるだけ安定した収益があげられるように資産配分をコントロールすることです。

 ここ数年間の傾向として、地域銀行では預金が増加する一方、貸出金は伸びず、余った資金を国債に投資して収益を上げてきました。しかし、金利がここまで低下すると国債を買って収益をあげることは難しくなります。また、日本の財政状況を考えれば、金利上昇によって国債が値下がりする潜在的リスクが高くなるため、国債の期待リターンは低下し、リスクに見合った十分なリターンはもはや確保できそうにありません。

 では、何で運用するかといえば、為替リスクを取った外債投資など、より期待リターンの高い投資を増やすしかないと思われます。もちろん、これらは国債に比べるとリスクが高いため、割り当てられる資金は国債運用資金の1〜2割にとどまるでしょうが、例えば、豪ドル国債の利回りは日本国債の10倍近い水準なので、投資採算は十分と思われます。

 同じような考えから、外債投資を増やす国内金融機関は今後増えてくるはずです。とすれば、こうした投資資金が為替相場でボディブローのように作用し、円安ドル高トレンドを下支えすることになりそうです。

酒井からのコメント

 あまりにもタイミング良い原稿をありがとうございました。日銀の政策がマーケットに良い影響を与えていることは確かなようです。しかし、まったく問題がないとは言えませんね。特に、為替と株価に隠れて報道されないことが多い金利の問題は要注意だと思います。金利というテーマは、理解するのも難しいですが、ご指摘のように特に金融機関に対する影響は大きいですから、しっかり見ていく必要がありますね。
 また、原稿をいただいてからこの間、日銀の政策に対するマーケットの反応にも微妙な変化があるように思えます。つまり、織り込み済みと言うことですが。このあたりもよく見ておかないといけない部分でしょう。
 外交や憲法問題等で安倍政権の問題が表面化しつつあるだけに、政治も絡めて要注意の時期に入りつつあるような気がします。


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