Seijiの金融情報
安倍政権の政策に対する期待感から円安・株高が続いています。マーケットでは、今年末に1ドル=120円、日経平均15,000円といった強気シナリオを主張するストラテジストも出てきました。
緊急経済対策とインフレターゲット政策で景気を下支えする一方、米国や中国との関係を修復。さらに、衆院議員定数の削減やTPP参加の目途をつけ、参院でも過半数を奪回して、憲法改正に着手する環境が整うといった展開になれば強気シナリオが現実味を帯びてきます。
しかし、そのためにはデフレからの脱却を達成しながら、財政再建の道筋をつけていくという困難な目標を達成する必要があります。これはいわば綱渡りのようなもので、綱から落ちてしまうリスクは高いといえます。
まず、「インフレ目標2%」の設定が実現しても、需要の押し上げにつながるかどうかは不透明です。「消費者物価が上昇する→インフレになりそうだからモノを買おうと思う人が増える→消費が増える→企業が生産増強のため設備と雇用を増やす→消費が増える」というよい循環につながることは期待薄です。足許の円安が続けば消費者物価は今年後半に前年比プラスに転じる見通しですが、モノの値段は上がるが給料は増えないという展開となってしまうような気がします。
さらに、インフレ誘導政策によって長期金利が上昇してくれば、国債の利払い負担が増えることから、消費税率を一段と引き上げることが必要になってきます。となれば、インフレ目標は達成しても、需要は押し下げられるという最悪の結果になります。
海外要因も気になります。まず、米国は、今のところ個人消費、住宅投資といった家計部門の指標は好調ですが、生産、景況感をはじめとする企業部門の指標には力強さがありません。雇用の回復はパートが中心で、長期失業者は減っていません。また、欧州は債務問題が小康状態にありますが、財政不安を抱えるユーロ圏周縁国の政府債務問題がピークアウトする見通しは立っていません。問題は先送りされたままです。9月〜10月に予想されるドイツ総選挙の結果次第では、債務問題や財政不安が周縁国から主要国に広がる恐れもあります。
結論として、当面のマーケットは、安倍政権の経済財政政策に対する期待感から堅調な展開が予想されますが、徐々に政策の実効性に対する疑念が生じ、調整局面に入ってくると思われます。その後の展開については、7月の参院選で自公が過半数の議席を獲得できるかどうかが大きな分岐点になるでしょう。
ほぼ2年ぶりのアップとなりました。
昨年末から、アベノミクスと持ち上げられた相場ですが、予算も組まれて本格的に動き出すのはこれからです。現状は、プロ野球のキャンプと同じで、投球、打撃、守備ともあくまでも練習ベースでどうみるか?で市場が動いているわけです。確かに、基本方針を探るには悪いことではないと思いますが、実戦はこれからであり、具体的に政策が動き始めて、経済面でどのような変化があるのか、これからしっかり見ておかなければいけないところだと思います。
はじめからネガティブなことを書くなと言われそうですが、冷静に国内外ともに、日本が置かれた環境を見れば、それほど簡単に日本経済が再生できる状態ではないと思います。
政治の世界は与党多数で安泰であったとしても、経済は常に流動的であり、不安定なものです。漠然と相場という世の中の動きに流されるのではなく、気を引き締めて経営に当たるべきです。
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