F&Aレポート

F&Aレポート 2023年1月10日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

「知的コミュニケーション」のためのことばづかい あいまい表現「とか病気」「やっぱり病」

 私たちのコミュニケーションには、大きく分けて3つの種類があります。

「情緒的コミュニケーション」「社会的コミュニケーション」「知的コミュニケーション」です。

「情緒的コミュニケーション」とは、いわゆる「おしゃべり」です。「昨日は楽しかった〜」「私も楽しかったよ」というような、親密で私的なコミュニケーションです。

「社会的コミュニケーション」は、「おはようございます」「お世話になります」というような、それ自体にはあまり意味を持たない言葉でも、人間関係を保ち社会生活を送るためには欠かせない社交的なコミュニケーションです。そして「知的コミュニケーション」とは、確かな目的を持つコミュニケーションです。ビジネスの情報伝達には目的があるので「知的コミュニケーション」ということになります。「知的コミュニケーション」には、あいまいな表現はNG。

 今回はまず「とか」「やっぱり」について確認しましょう。ホウレンソウ、プレゼン、商談、日常会話などでも無意識に使うことが多い言葉です。

「とか病」「やっぱり病」

「あのぉ〜、年があけるとぉ〜、やっぱりぃ〜、なにかぁ〜、新しいことをしたいなぁ とかぁ〜、思ってぇ〜、あとぉ〜、年末とかにぃ〜、やっぱりぃ〜、食べ過ぎたりとかしてぇ〜、やっぱりぃ〜、太ってしまったりとかがあってぇ〜、もうなんとかしたいとかぁ〜、思ってぇ〜、友達とかもぉ〜、誘ったりとかしてぇ〜、ジムとかにぃ〜、通うようになったんですけどぉ〜、やっぱりぃ〜、まだ体重は戻ってなかったりしてぇ〜、やっぱりぃ〜、頑張らないととかぁ〜、思っています」
 この発言には「とか」は9回、「やっぱり」は5回出てきます。こうして文字にしてみると違和感があり、「自分はこんな表現はしない」と思う人でも、案外似たような表現をしていることがあります。

 少し前までこのような「とか」「やっぱり」の使い方は、「若者言葉」と揶揄されていました。耳障りで「だらしがない」「下品」という印象もあると言われています。

 しかし最近は「若者」に限ったことではなく、30代、40代、50代の大人世代でも無意識のうちに使っていることが多いようです。

 こういった言葉が連発されると、一文(主語から述語まで)がどんどん長くなり、非常に聞きづらいことも特徴です。「とか」「やっぱり」を外して、一文を短くするだけですっきりとわかりやすい伝え方になります。さらに、「てぇ〜」「にぃ〜」のような、語尾を伸ばすのもやめてみると、下記のような文章になります。
「(私は)年が明けると、何か新しいことがしたいと思いました。(実は)年末(年始)に食べ過ぎて太ってしまい、友達も誘ってジムに通うことにしました。まだ体重は戻っていませんが頑張ろうと思っています」


「とか」

「とか」は本来、物を並べるための助詞「と」に、不確実なことを表す「か」が結合している並列助詞です。

「健康のためには、散歩とか運動をしたほうがいいですよ」

のように、二つ以上のものを並べて提示するときに使います。「ジムとか行って」「友達とかも誘って」という風には使いません。「ジムに行って」「友達を誘って」でいいのですが、「とか」にすると不確実な意味が強調されて、話す内容が全体的にあいまいになってしまいます。

「やっぱり」

「やっぱり」は「思った通り」「〜と同様に」「案の定」「依然として」という意味です。そこには話し手の意思が入っています。「やっぱり」が乱用されると、何が言いたいのかがボケて、自信のなさが透けて見えます。

 ことばづかいは習慣なので、「知的コミュニケーション」を求められるビジネスの場だけ取り繕おうとしても限界があります。また、ことばづかいを誰かに指摘されるのも気持ちがいいものではありません。自分自身でよほど意識していないと、気づきもせず、治りもせずという困った「病」なのです。