F&Aレポート

F&Aレポート 2022年8月30日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

「心理的安全性」〜安心して挑戦できる職場をつくろう

 考えたことを忖度なく言い合える職場、上司と反対の意見を出しても前向きに受け入れてくれるチーム。このような「場」を企業や組織で実現するために、近年注目されているのが「心理的安全性」という考え方であることは、以前レポートでもご紹介しました。

 日本の企業の会議では今でも「自分の意見は抑え、全体の流れに従う」といった場面が多くあるようです。「チームの和を乱しそうだから」「ウザいと思われたくないから」と いった理由で意見を飲み込むのが「空気を読む」といった言葉で表現されます。日本人らしい集団心理であり、合意形成の方法ともいえるでしょう。職場の「心理的安全性」を高めるために私たちは何ができるのか、今一度考えてみましょう。(産業カウンセリング)

1、4人に1人が離職を考える時代

 全国の上場企業に勤務する20代〜50代の従業員を対象とした「仕事と心理的安全性」に関する意識調査(2021年実施)では、コロナ禍の現在、約4人に1人に離職意向があり、彼らは心理的安全性が低いという結果が示されています。そして、離職意向がある人は、その企業で働き続けたい人よりも「助け合い因子」と呼ばれる数値が低いという結果も出ています。職場でトラブルや負荷がかかる状況になったときに、相談して協力しあえる「助け合いのある組織」であることが、離職の軽減につながっているということになります。

2、「心理的安全性」が注目される3つの背景

 心理的安全性が注目される背景として次の3つを確認しておきましょう。

  1. リスクマネジメントの観点 ビジネスにおけるプレッシャーが非常に高くなってきていて、高い目標設定や業績目標を課されている。そういう職場ではなかなか自由に思っていることを言えない状況が発生しやすく、パワハラや不正が起きやすい。
  2. VUCA(ブーカ)の時代 感染症、自然災害、ビジネス環境の急速な変化など、予測不可能な時代になっているため。経験豊富で声の大きなリーダーが強権を発揮してチームを導くというやり方は現実的ではありません。現場の知恵を集結して不確実な時代に対応していかざるを得ません。創造性やイノベーショの鍵は心理的安全にあるといえます。
  3. チームのダイバーシティ化 男性の正社員で多くが占められていた時代は、同じような価値観で仕事が進められていましたが、今はライフスタイルや価値観も含めて多様化されています。共通の均質性が低くなってきているともいえます。そういう場で共通認識を持つにはお互いに率直に意見を言い合う必要があり、心理的安全性が必要になります。
3、「心理的安全性」を高める施策

【施策その1】 (目先の業務テーマではない)チーム定例会の継続実施
【施策その2】 リーダーとメンバーの1om 1 ミーティング
【施策その3】 チーム単位、個人単位の行動目標の共有とエクスチェンジプログラム

 チーム定例会は、メンバーの誰もが同じ発言量を確保できそうなテーマで行うのがポイントです。専門性が高いテーマでは、権威の高い、低いによって発言しづらい人が出てきますので要注意です。
 1on1については、会議だけでは発言しやすい気質の人とそうでない人がいるので、話しやすい1on1の場を設定することが重要です。
 目標の共有については、目標を設定し、フィードバックをお互いにきちんと行うこと。一般的に日本企業の職場では、仕事に対するフィードバックを受ける機会が少ないという課題があると言われています。
 自分が他人からどう見られているかを知る機会が少なく、そのため自己認知が進まない管理職以上のビジネスマンが多いといわれます。本来、役職は役割にすぎません。部下がリーダーの1on1ミーティングを行い、リーダーが部下に弱みを言えるような関係になれば風通しが良くなり、心理的安全性の向上、生産性向上に繋がるのではないでしょうか。