F&Aレポート

F&Aレポート 2022年7月30日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

「底辺の職業ランキング」ってナニ!? 〜「職業」と「働き方」について考える

 高校生の就職活動は入学試験と同じように、決められた日程などのルールがあります。

 今年も9月5日(沖縄県は8月30日)に学校の推薦、応募書類の提出が一斉開始となり、9月16日には選考が開始されます。

 一方で、新卒向け就職情報サイト「就活の教科書」が公開した「『底辺職とは?』底辺の仕事ランキング一覧」という記事に対し、6月下旬から「職業差別を助長する」といった批判が相次いだのをご存知の方も多いと思います。(運営会社は指摘を受け、現在は記事を削除しています)

 キャリアコンサルティング技能士として、大学生や高校生の就活支援をしている筆者としては、この記事を大いに疑問視しましたし非常に残念に思いました。

 職業選択は人生を左右するほどの問題ですし、どのように働くかはクオリティ・オブ・ライフに通じます。社会人としての経験が浅い若い人はこういった情報を鵜呑みにしてしまう恐れは十分にあり得ます。彼ら彼女らは、「底辺の職業」とレッテル貼りをされた仕事や、その仕事に従事する人、またはその家族をどのような視点で見つめるのでしょうか。

 ネット上ではすでに削除されている情報とはいえ、このような考え方の根本は根強く潜み、世の中の偏見や歪み、不公平感を生み出すような気がしてなりません。

 私淑としている国連高等弁務官だった緒方貞子氏は、かつて「職業に貴賎はない。ただ働き方には貴賎はある」と述べました。「職業」と「働き方」。貴方はどのようにお考えになりますか?

1、「底辺の仕事ランキング」

 記事は2021年5月までに公開され、「底辺職の特徴やデメリット、底辺職を回避する方法について紹介していきます」とあります。

 冒頭では「何を底辺職だと思うのかは人それぞれ」とし、「一般的に底辺職と呼ばれている仕事は、社会を下から支えている仕事です。そのような方がいるからこそ、今の自分があるのだということに気づきましょう」と書かれています。

 また、「どんな働き方を選ぶか」「何に価値を求めるか」は人それぞれとした上で、12種類の職業を平均年収とともに紹介しています。

 ランキングは上から「土木・建設作業員」「警備スタッフ」「工場作業員」「倉庫作業員」「コンビニ店員」「清掃スタッフ」「トラック運転手」「ゴミ収集スタッフ」「飲食店スタッフ」「介護士」「保育士」「コールセンタースタッフ」だった。

2、「底辺職」に就かない方法、抜け出す方法

 「底辺職」(そもそもこのネーミングもどうか。存在するのか。書いていて気持ち悪いが記事のまま引用します)の特徴として

  1. 肉体労働
  2. 誰でもできる仕事
  3. 同じことの繰り返しであることが多い
などと解説し、デメリットについては
  1. 年収が低い
  2. 結婚の際に苦労する
  3. 体力を消耗する
などを挙げています。  さらに「底辺職に就かない方法、抜け出す方法」「未経験でも採用されやすい」などを紹介しています。

 まとめとして、「世間一般に言われている底辺職について解説しましたが、何を底辺職と呼ぶのかは人それぞれです」としていますが、「底辺職と呼ばれる仕事は誰でもできることが多いです」とし、「底辺職と呼ばれる仕事に就きたくない方は、転職したり、スキルや資格を身に付けることが重要です」と締めくくっています。(JCASTニュース 参考)

 欧米の「労働観」は、アダムとイブが神様との約束を破った代償として「働く」とされていますが、日本は「古事記」や「日本書紀」をみればわかりますが、神様が自ら働いています。しかも、その労働は特殊技能や知識労働ではなく、天照大神が機を織ったり、田を耕したりという普通の仕事でした。「万葉集」にも「源氏物語」にも労働を愛でる歌がたくさん出てきます。

 そこには「この世には、自然に仕える仕事と、人に仕える仕事がある。その違いだけで、職業にに貴賎はない」とあります。今の時代、貴方はどのように考え、子供達に語りますか?