F&Aレポート

F&Aレポート 2021年7月20日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

オリンピックがもたらすもの 1〜「冷凍食品」「家電」そして、東京2020のレガシーは?

「東京2020オリンピックまであと3日」と、言ってもどこか虚しく盛り上がりに大いにかけた オリンピックとなってしまった感は否めません。しかし、世界を舞台に繰り広げられるこのスポーツの祭典は、必ずその後の世界にもたらすものがあります。たとえば、1964年に開催された東京オリンピックが日本にもたらしたものは「冷凍食品」と「家電」と、言われています。この「家電」といえば、「三種の神器」としても知られる「白黒テレビ」「電気洗濯機」「電気冷蔵庫」でした。これらはいずれも、日本の戦後復興、経済成長、豊かな暮らしを象徴するものとなりました。では、「冷凍食品」についてはどんな背景があったのでしょうか。ネット記事から割愛してご紹介しながら、このたびの東京2020オリンピックがもたらすものについても触れてみたいと思います。https://2020.yahoo.co.jp/column/detail/201712110005-spnavi

1、日本の食文化繁栄を築いた1964年東京大会 選手村食堂の挑戦

 1964年の東京オリンピックの舞台で活躍したのは、競技に出場する選手だけではありません。その裏で、93の国と地域からやってきたおよそ7000人の選手とコーチなど関係者への食事を提供するために、全国から集まった300人の料理人たちが日々奮闘を重ねていたのです。選手村に作られた食堂は3つ。そのうちのひとつで、日本、アジア、中東の選手団向けに用意された富士食堂の料理長として腕を振るったのは、のちに帝国ホテル総料理長となった村上信夫さん。村上さんから聞いたという当時のお話は次の通り。


 東京オリンピックで用意しなければならない料理は多岐にわたります。中でもアフリカやイスラム圏で食べられている料理(当時日本では名前も知らなければ料理書にも載っていない)を作るのはとても大変でした。各国の大使館を訪ねて、駐在員の奥さまに作り方を教えてもらったり、頂いたルセット(レシピ)をもとにホテルで料理を作り、それを奥さまたちに食べていただき、その出来栄えを確認したりしました。さらに、海外で働いている日本人に話を聞いたり、料理研究家の力を借りたりしながら、料理の情報を集める作業がとにかく大変でした。また、作り方が分かっても食材そのものの入手に苦労するケースも多々ありました。当時の日本は、生のフォアグラですら入手困難だった時代ですので。

 最も苦労したのは大量の食材を保存することでした。期間中に必要な食材の量は「ピーク時には1日に肉15トン、野菜6トン」。当時は、冷凍食品の評価が高くなかったのですが、かといって生鮮食品だけで賄おうとすると、東京都の消費者物価に影響を及ぼすのではないかという声もありました。

 そこで冷凍技術の開発を行い、選手村で提供する食材を冷凍保存して使っていくことにしました。最終的には試食会を行い、生鮮と冷凍それぞれの素材を使った料理をそれとは告げずに食べていただき、あとからそのうち一部が冷凍だと種明かしをしました。当時オリンピック担当相だった佐藤栄作さんが「どちらもおいしい」と太鼓判を押してくれました。その結果、正式に冷凍品の導入が決まり、これをきっかけに冷凍技術が日本全体に広まっていき、これからの時代は冷凍品も活用していくべきだという意識改革にもつながったといわれています。

 努力と挑戦が功を奏し、日本の食材のおいしさや料理のきめ細やかさは、外国の選手や関係者に伝わり、それまで日本についてあまり知らなかった人たちが、日本はこんなにおいしい食べ物がある素晴らしい国だという認識を持ったと言われています。

 東京オリンピックが日本にもたらしたのは、「日本人がこれだけできるんだ」という自信です。戦争によって、それまで負い目を感じていた日本人が胸を張って暮らしていけるようになったのは、東京オリンピックのおかげではないでしょうか。また、選手村で働いた全国の料理人たちが、オリンピック後に地元に戻り、選手村で学んだ料理を広めたことで、本格的な西洋料理が全国に浸透していったこともオリンピックレガシーのひとつだと思います。日本の食文化のレベルアップにつながったと思います。


 さて、一時は経済効果30兆円とも歌われた東京2020オリンピックがもたらすものは何でしょうか。世界的なコロナウイルス感染により大幅に予定は変更され、開幕直前まで二転三転する中でダメージしかないという声も聞かれます。しかし、だからこそ今大会で得られた気づき、世界の共通認識というものもあるはずです。つづきは、次回のレポートでご紹介したいと思います。