F&Aレポート
F&Aレポート 2021年6月20日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
習い事のスタートは「6歳の6月6日」
昔、祖母から「6歳の6月6日に稽古を始めると上達する」と、聞いたことがあります。なぜ、6歳の6月6日なのかその理由を聞くこともなく祖母は他界してしまいましたが、調べてみると、これは室町時代の能の書、世阿弥の「風姿花伝」に記されていることがわかりました。そこには子どもの習い事だけでなく、人の教育にも通ずる考え方がありました。
世阿弥「風姿花伝」稽古はじめについて
芸能においては、おおよそ七歳をむかえるとき初稽古とするのです。この頃の稽古は、子どもが自然にやり出した中に、生まれ持った美点が見つかるものです。舞いや所作、また謡(うた)いは、たとえぎこちない動きでも、何気なくやり出したらそれを大切にして、まずはその子の心のままに、やりたいようにやらせてみることです。こと細かに、良い悪いと教えてはいけません。あまり厳しく注意すると、子どもはやる気を失い、能そのものが止まってしまうでしょう。
さらに、基本動作以外はやらせてはいけません。込み入ったことは、仮に出来ても教えるべきではないのです。ましてや大舞台の幕開けの能には、立たせてはいけません。子どもにふさわしい場面で、まずは得意な芸をやらせてみるのが良いでしょう。
もともと「稽古」には、「古くを考える=古(いにしえ)に学ぶ」という意味があります。また、「稽古照今(けいこしょうこん)」という四字熟語は「過去の出来事や先人に学んで、今の世の中に照らし合わせて考える」という意味で、「温故知新」と似た意味合いを持ちます。
現在では、習いごとは「レッスン」とも言いますが、茶道、華道、演舞、武術など、昔ながらの「稽古」と呼ばれるものには、スキルだけではなく、訓練を通して、礼儀や作法などを学び、人間性の向上が求められる一面があります。
日本ならではの教えの意味、教育の根本が「稽古」に表れているような気がしてなりません。