F&Aレポート
日本人の感覚に近いフィンランド式コミュニケーション1 〜学力トップクラスの国 フィンランド式思考トレーニング
フィンランド式の教育手法を用いて育つ力は、「コミュニケーション」と言われます。
日本と欧米のコミュニケーションの違いは明確です。表現にあいまいさを残し、曖昧な表現を受け取った相手がその行間を察する日本。相手の立場や状況を考えて接することに重点を置きますから、「空気を読む」という言葉も生まれてくるのです。言ってみれば「気遣いのコミュニケーション」です。
一方で欧米は自らの意志や伝えたい情報をはっきりと伝えます。日本人の感覚からすれば、自己主張が強いと感じるかもしれませんが、相手に解釈を委ねることのない、誤解の少ないコミュニケーションと言えます。
フィンランドは「グローバルコミュニケーション」というテーマに基づいて教育の柱を構成しています。そこには文化の異なる人々と渡り合うために「相手の立場に立った」コミュニケーションで、自分の意志を正確に伝えることのできる表現力を身につけるという意図が込められています。そして、お互いが表現することを通じて、相手の話をよく聞くことを徹底する教育は「相手の立場に立った」コミュニケーションを成立させるための大切な土台ともいえるでしょう。フィンランド式の教育は本来、日本人の得意としたコミュニケーションの手法を振り返り、より良い方向に進むための一つの手段になるかもしれません。
幅広い視野を持つ事のできる「発想力」、筋道を立てて話すための「論理力」、相手に伝えるための「表現力」、自らを振り返りよりよくなることを目指す「批判的思考」を養って思考力とコミュニケーション力の土台は育まれます。
■フィンランド式トレーニング 重要情報を見つけよう!
思い込みを取り除き、複数の可能性を考える癖は身についているでしょうか。このゲームで批判的思考力「内容を整理し、重要な内容を選ぶ」能力を鍛えます。
まずは北風が、旅人に向かって思い切り息を吹きかけました。すごい風が旅人を襲います。でも、旅人は「おお寒い」とコートの襟を立て、身体をかたくするばかり。それを見ていた太陽は「ぼくの番だ」というと、一層明るく輝き出しました。すると旅人は「晴れてきたな。暑い暑い」と、コートやセーターを脱ぎ始めました。
北風は驚いて「力ばかりではダメなんだね」といい、もう力くらべをしようとは言わなくなりました。(イソップ物語「北風と太陽」)
(1) 太陽が「のぞむところだよ」と答えたこと
(2) 北風が思い切り息を吹きかけても、旅人はコートを脱がなかったこと
(3) 旅人がコートに加え、セーターまで脱いでしまったこと
答えは(2)ですね。もし太陽が「いいよ」と返事をしていたとしても、旅人がコート以外に脱いだのが靴下であったとしても、物語の教訓には影響しません。一方、北風が力いっぱい吹きかけた風で旅人がコートを脱いでしまったら「力でどうにかなる」という教訓に変わってしまいます。つまり、内容が少し変化したとき、本質に影響のない箇所は不要な情報、影響のある箇所は必要な情報といえます。本質が見えないときにも、こうしてひとつひとつの情報を整理し、必要か不要かを判断していきます。そうすれば、自然と重要な内容が導き出せるはずです。(PHP文庫 フィンランド式 思考トレーニング)