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なぜ巨額の下方修正なのか?〜損益分岐点の考え方〜
[2009/2/12]

 トヨタを初めとする大手上場企業の下方修正が続いています。ついこの前まで、 過去最高益を記録だったのになぜでしょう。売上が3割減少したなら、利益も3 割減少するならわかるのですが、それ以上の減少です。これを理解するには損益 分岐点の知識が必要です。
 グローバリゼーションを勝ち残るため、大手企業は、設備の増強を行い、単価 を上げ、利益率の向上を図りました。トヨタのレクサスなどはその典型例です。 派遣などで人件費を変動的なものにすることは可能となりましたが、それ以上に 工場や高級な販売設備等の設備を更新したため、固定費そのものは増加しました。 その結果が、過去最高益だったのです。そして、米国消費が突然逆回転を始めた ことで、売上が減少を始めました。そうなると、高い利益率は逆に高い率で赤字 を拡大する方向に回転を始めたのです。この表をご覧になって、その数字の変化 を確認してみてください。
 これを見ながら企業経営について考えてみます。今の大企業の多くは、企業体 質を高単価・高利益体質+過大設備に転換してしまっています。その結果、膨大 な赤字を積み重ねています。経営者は今の経営環境を早急に把握し、企業体質の 見直しを行い、転換していかなければ、大きな渦に飲み込まれてしまいます。が、 どのような方向に進めばよいのかわかりません。派遣切りだけでも大問題になっ ているのです。せいぜい工場の封鎖や、公的資金を求めると言ったことでしょう か。いずれにしても、大企業だけに機動的に対応できないところが続出する可能 性があります。
 将来という視点で見ると、現在の不況の底が見えない中で、かつてのような高 いものが大量に売れる時代は当面来ないものと考える必要があります。「低単価、 低利益率、少量」、これらが次の時代のキーワードではないでしょうか。全国チ ェーンのショッピングセンターではなく、身近で丁寧な小売店にチャンスがある ような気がします。もちろん、お客様のニーズをしっかりつかみ、信頼されるお 店であることが大事な条件です。これは、今まで東京の大手資本に圧倒されてい た小規模や地方の事業家にとってチャンスだと思います。大きい夢を見ることも 時に大切ですが、今は小さくても確実なビジネスをする時です。派遣で仕事を失 った方も、自分で何かを立ち上げた方が可能性が高いかもしれません。終戦直後 の闇市のように。
 なお、これは製造業や流通業といった実業についての検討です。金融業の赤字 は、金融市場の崩壊によるもので、損益分岐点で同じように理解できるものでは ありませんのでご注意ください。

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[2009/2/12]

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今は本当に「買い」か?
[2008/10/29]

 7,000円を一時割り込んだ東京株式市場の日経平均株価は、10月28日、29日と上昇に転じ、29日の終値は8,000円台を回復しました。為替もドルで言えば90円から円安に振れています。まさに荒れた市場で、「今が底値だから買い時だ」という声を最近あちこちで聞きます。確かに、安く買って高く売らないと儲からないのが市場ですが、本当に今が買い時なのでしょうか。新聞でも同じような強気のコメントが載り、ラーメン屋さんでも聞かされて、「何となく買ってみようかな」と言う気になってしまいそうですが、もうちょっと冷静に考えてみましょう。
 東京だけでなく、NYも、ロンドンも、フランクフルトも、その他ほとんどの国の市場はこの1か月近くメルトダウンとでも言えるような下げの連続でした。株価はほとんどが下げ、為替は円に集中(つまり自国通貨の暴落状態)のワンパターン。その原因はどこにあるのでしょうか。金融システムに大きなロスが出ていると言われていますが、どんなところにどの程度の損失があるのでしょうか。また、それによる金融機関の損失はどの程度なのでしょう。これらの金融の問題の結果、実体経済にはどのような影響が想定されるのでしょうか。それは金額としてどのくらい想定されるのでしょうか。また、想定される問題に対してどのような対策が効果的なのでしょうか。すべて完全に把握することは難しいとしても、今、「買い」を指向している人たちはこの市場と実体経済の全体像をどの程度把握しているのでしょうか。
 話は変わりますが、各国政府と中央銀行は公的資金などを通して、市場のテコ入れを行っています。これでムードが良くなるという話がありますが、政府は上の質問に対する回答を持っているのでしょうか。たぶん、NOですね。とにかく、転がり落ちていく市場に歯止めをかけているのが精一杯のところで、その後どのように改善していくかなんて展望を持ってる国はまずないと思われます。
 ・・・という状況で、果たして「買い」なのでしょうか。確かに、2日連続の上げではあります。問題は、下がった価格に投資家が飛びついた後の市場がどうなるかです。市場では、誰かが買えば価格は上がります。売りを待ってる人は、上がり始めると売るのをいったんストップします。そして、ある程度上がったところで「売り」を浴びせます。その結果、市場はもう一段の下げになる・・・というシナリオはあまりに悲観的でしょうか。
 市場には、他人と同じことをしていては儲からないという鉄則もあることも忘れてはいけないのです。


 この文章は、情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資に関する意思決定は最終的にご自身の判断で行ってください。

[2008/10/29]

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世界的金融恐慌について 〜酒井税理士事務所の見解〜
[2008/10/11]

 ▲はじめに
 昨年のサブプライム問題に端を発した世界的な金融恐慌はとどまるところを知りません。連日報道される株式市場・為替市場の混乱や世界的に大手と言われる金融機関の破綻、そして国家・中央連銀による救済策。大変なことはわかるが、いったい何が起きているのか、なぜそうなったのか、これからどうなるのか、私たちの仕事や生活にどんな影響が出るのか、その対策はあるのか。
 不安な情報だけが報道される中で、私どもの事務所では問題点を整理し、出来るだけのことを考えてみたいと思います。なお、今回の危機は大変深刻であり、ひとことで説明することは困難です。また新しい事実がこれから報道されていくと思います。この文書は現時点(2008/10/11)でわかっているものを中心に考えるものであり、また酒井が個人的に考えたものである点をご了承ください。

▲なぜこのようなことが起きたのか
 今回の問題は、まず金融の分野で起きたという点が最初の問題です。金融とは、お金が世界を回る仕組みです。具体的には、お金の貸し借りの銀行業務、株式や債券などの有価証券を取り扱う証券業務、生命保険や損害保険の保険業務といったものです。このような金融の世界では、信用が不可欠です。100円しか持っていない人でも、銀行が審査をして信頼できると思えば、1000円のお金を貸します。すると、その人は100円しかないのに、1000円の買い物ができるわけです。その結果、1000円の消費活動が行われ、経済は活性化することになります。細かな注意事項はたくさんありますが、今回の金融危機を簡単に取り上げると、どうもその1000円が不良債権だった、返済できそうもないという話になったわけです。
 それなら15年前に起きた日本のバブルと同じじゃないか、なのに今回はちょっと違うぞと思われる方も多いかもしれません。
 そうなのです。いくつかの点でちょっと違うようです。日本のバブルは日本国内で起きたものでした。自主廃業という形で破綻した山一証券の営業は、当時まだ健全だった米国のメリルリンチに引き継がれました。しかし、今回はそのメリルリンチが危機的状況となり、バンカメという米国の大手銀行に吸収されました。そのバンクオブアメリカ(バンカメ)も決して安泰ではないようです。つまり、世界中の金融機関が次々と危機的な状況にあると思われると言うことです。次に、今回の金融危機は様々な制度の裏付けのもとに発生したシステム上のバブルの崩壊という特徴があります。つまり、株や為替といったマーケットが混乱しているだけでなく、その背景にある制度が大きく揺らいでいると言うことです。それは、グローバリゼーション、デリバティブ、証券化、時価主義、格付けと言われるものです。日本のバブルも同じようなことが言えなくもありませんが、今回はより複雑で巧妙だというイメージです。
 今回の金融危機の発端はサブプライム問題とされています(新聞報道等で取り上げられたには昨年の7月です)が、この「サブプライムローン」はリスキーと言う点で、現代の金融技術を駆使して作り上げられた商品です。そもそもサブプライムローンとは米国の低所得層向け住宅ローンです(プライムの次=「サブ」という意味です)。その住宅ローンを証券化し、安全だという高い格付けを行い、デリバティブでお金をたくさん生み出す工夫をして世界中にばらまいた。その商品は時価主義により評価され、公認会計士も認めた上で、高い資産価値で決算書に表示された。ごくごく簡単に説明すると、このようにしてバブル(=実態の裏付けのない価値の上昇)ができあがりました。実体経済という面から見ると、100円どころか、10円しか持っていないような人、収入にしても50円程度の人に1000円、場合によっては1万円を貸して住宅を買ってもらいました。ドンドン貸し付けていったので、米国中に住宅がたくさん建ちました。たくさん建っていくので住宅は値上がりして、最初にローンを借りた人は新しくローンを組み直しました。米国のローンは、住宅を買い換えなくても、組み直すことで増えたローン分の現金が手に入る仕組みになっています。住宅需要が伸びて、資産価値は上がっていますから、米国の人たちにはお金がたくさん入り、クレジットカードもたくさん持って新しい車も家電製品も買っていきます。このようにして、米国経済は好景気が続いていきました。もちろん乗り遅れた人もたくさんいて、ニューオリンズのハリケーンカテリーナのような災害が起きたり、911のようなテロもありました(これらは今の日本でも取り上げられている格差問題の事象です)。またLTCMの破綻のような一時的ショックもありましたが、多くの米国人の目の前の生活は豊かですから誰も気にしません。
 実は、米国は80年前の世界大恐慌の時に同じような目に遭い、金融機関の規制を大変強化していたのですが、ベトナム戦争で疲弊した米国経済を救うと言う目的でレーガン政権以降、規制緩和を行い自由競争の中で経済改革を行ってきたのです。その米国のシステムの最先端が今の世界なのです。この規制緩和の流れは、日本にも流れ着き、「構造改革」というスローガンで様々な改革が進められてきたのは皆さんご存じの通りです。
 それが今から1年ほど前にサブプライムローンに対する信頼性に問題が起き、逆回転を始めました。格付けが高い、つまり安全な商品だと言われていたが、どうもよく見るとそうではない。サブプライムローンを返済できない人が続出し始めたのです。もともと低所得層の人たちですから、仕方ありません。となると、サブプライムを組み込んだ金融商品の信頼性は大きく揺らぎます。しかも、実体の裏付けに乏しい金融工学のテクニックで飾り立てていますから、調子が良い時の利益は高くきれいに飾ることができるのですが、悪くなった時の損失は全く逆に膨大になってしまいます。加えて、証券化されていますから、最初に貸した銀行からファンドのようなところに債権譲渡されてしまい、他の商品も様々なものが組み合わされて、自分が持っている商品にサブプライムがどれだけ組み込まれているかすぐにはわかりません。さらに米国だけでなく、グローバル化で世界中に影響が及びます。時価主義ですから、損失は損失としてしっかり計上しなければなりません。中途半端なことをやってると内部統制に問題ありとされてしまいます。
 なぜこのようなことが起きたのか。正確な答えはわかりません。が、人が経済活動を営む以上、バブルは起きてしまうと言うことです。また、規制緩和のように、規制を緩和すれば、市場の参加者が自由に競争し、消費者に品質の良い商品が低価格で提供されるという心地よいスローガンが受け入れられますが、実際の世の中はそのように単純ではありません。しかし、日本のようにデフレ経済が続き、混迷した時にはあっさりと受け入れられてしまうのです。そして、学者はこのような経済実態を理論的にのみ構築しようとします。現場の声ではありません。しかも、実際に起きた社会現象を時間をかけて分析した上でのもの、つまり過去のモノです。経済学という学問が経済分野での意思決定にどこまで有効なのか、国民経済にプラスなのか、この機会に徹底的に検証される必要があります。

▲何が起きるのか
 金融制度の崩壊と新しい金融秩序の創設
 金融の収縮→企業に資金が回らない状態→深刻な不況
 公的資金導入による財政の悪化
 考え方の変換(政治への波及)

 今回の金融危機は、金融資産の値下がりと言うだけでなく、金融システムの崩壊という問題です。モノが動く時には、その対価としてお金が動かなければなりません。そのお金の流れがおかしくなると言うことは、モノも動きにくいと言うことになります。お金が動かなくなれば、それで設備投資をしたり、消費活動も滞ることになります。したがって景気も悪くなります。今回は世界中を巻き込んだあまりに巨大な金融システムが崩壊してしまいました。そのため、実際の景気に与える影響は計り知れないものがあります。現時点では、株価や為替の金融データに注目が集まっていますが、今後は、企業の業績が発表されていきます。特に10〜11月は多くの企業から上半期の決算発表が行われます。自動車販売や機械受注がすでに大きく減少しているようですが、中心的な産業に厳しい結果が出ていると言うことは、地震の後の津波のように、今後、幅広い産業分野に深刻な不況の波が及んでくる可能性が高いと言えるでしょう。世界中が疲弊していますから、海外への輸出も期待できません。
 具体的な現象としては、銀行の融資姿勢が厳しくなることによる資金繰り悪化、コスト削減による人員削減=失業者の増加、消費の停滞による売上の減少、輸入が滞ることによるインフレ、財政悪化による増税等が頭に浮かびます。今の大手企業はコスト削減を徹底しています。利益が出なくなればまず一番に人員削減と言うことになるでしょう。今は若者も高齢者も、その中間層も日本の老若男女問わず疲れ切っているという状態です。これに仕事がなくなる、年金が減額されるなどと言うことになれば、消費は減るばかりだと思います。
 そのような事態になると、政府は様々な救済策を立案、実行することになるでしょう。政治の問題はありますが、非常に偏った政権にならない限り、公的資金を使ったテコ入れが実施されることになると思われます。
 問題はこの公的資金、つまり税金の問題です。政府は、入ってくるお金以上にお金を出すことはできません。政府に入ってくるお金の大半は、税金と国債です。国債はすでに発行が滞りつつあります。巨額の損失を抱えた金融機関が、国債を買い続けることは困難でしょうし、もっと大変な海外の投資家が購入してくれるとも思われません。では、税金はどうでしょう。こちらも決して簡単に増税とはいかないでしょう。衆議院選挙が麻生政権は解散を先送りしていますが、消費税増税のような話は持ち出せない状況に変わりはないと思われます。財務省もこの数年は納税者に厳しい税制改正を繰り返してきましたが、政治の変化もあり、難しいと思われます。逆に景気刺激策として、減税の方針が打ち出される可能性があります。しかし、減税は税金を払っている人には恩恵がありますが、ほとんど払っていない低所得層には関係ありません。これからはこの低所得層が増加していくでしょうし、当然、企業も同じです。財政にゆとりがありませんから、補助金というのもまず無理な話でしょう。効果は限定的と言わざるを得ないのではないでしょうか。公的資金導入の方針が報道されても、市場の反応が芳しくないのは、それだけで今の状態が改善するとは思われていないことだと思われます。いずれにしても、税の問題は、政治に結びつきます。非常に困難な問題が起きるはずです。
 ここは発想の転換をして、今の危機的状況は日本人が改めて国家を考える良い機会にすればよいのではないかと思います。明治から戦後を経て作られた行政・官僚組織が硬直化してしまったシステムを、税を含めていったん0に戻し、お金がなくなった日本をどのように再構築していくのか、誰がどれだけお金を出してそのお金をどのように運用していくのか、いったんみんなが貧乏になった上で、もう一度議論しながら新しい国を作り上げていく時なのかもしれません。持っている財産をいかにして取り上げるかという話では結論が出ないと思います。今の国債はいったん棚上げにするようなことを考えて、今の政治家や官僚でない人たち、つまり既存の枠組みやしがらみにとらわれないたくさんのリーダーが、徹底的に議論を行い、国民が納得する財政システムを創造すればよいのではないでしょうか。そんなこと実現不可能だと思われるかもしれませんが、今までの枠組みの中で議論をする限り、明解な答えは出ないくらい今は大変な状態なのです。年金や医療保険は存続が困難と思われる状態だったところに、今回の金融危機が起きたわけですから、根本的な改革が必要だと思われます。問題はその時の基本理念を本当に国民のためのものにすることでしょう。

▲何ができるのか
 今回の金融危機とその先にある経済不況を前に、政府では減税を柱とする緊急経済対策を考えているようです。しかし、すでに何度も述べてきたように、今回の金融危機とその先にある経済不況は、大変根が深いものです。対策を考える前に、なぜこのような事態になったのかを冷静に知る必要があります。その上で、要因となったシステムを再構築しなければなりません。当然、その大半はいったん破壊することが必要でしょう。具体的な対策はその先にあるべきです。しかし、野党を含めて、国内でそのような議論が行われているという報道はありません。米国の投資銀行が実質的に消滅してしまったにもかかわらず、10月4日の日経新聞には、「貯蓄から投資へ」の広告が何ページも掲載されていました。大手メディアでこれなのです。太平洋戦争が敗戦で終わったその日の新聞に戦時国債の広告が載っていたそうですが、それと同じです。企画ものだから仕方ないしても、今のような混乱の時に、政府や大手機関のメッセージは私たちの実生活には役に立たないという点はしっかり理解しなければなりません。
 では、具体的にどうすべきなのか。ここでは経営者という視点で考えます。
 まず、どんな不景気になっても人は生きていかなければなりません。人が生きていく限り、そのための経済がなくなることはないのです。その中心は何か。学校で何度も習った「衣食住」、つまりその人が生きていくために必要なサービスを提供すると言うことです。少し範囲を広げて考えると、求められるものを提供すると言うことです。何が求められているのかというのも大問題です。これは自分の足で、自分の耳で、自分の感性でしっかり獲得するしかありません。インターネットよりも、直接出向いて、本音で話をして、お客様の要望をしっかり受け止めなければなりません。完全なものではなくても、とにかく真剣により良いものを求めていく姿勢が必要だと思います。金融経済は破滅的な状況になるとしても、最低限の実体経済は必ず残ります。
 次に、今の金融や経済が前提としているシステムを根本から考え直すべきです。より安いコストで世界中を市場とするグローバリゼーションや競争原理主義という考えの逆をいくのです。求められるものであれば、高い価格でも受け入れてもらえるはずです。それを自分たちがカバーできるだけの小さなマーケットに提供するのです。目が届く範囲ですから、きめ細やかなサービスが提供できるはずです。価格だけの競争は、最終的に品質をいかに落とすかという競争になってしまいます。それでは、自分たちが大切にしなければならないお客様を守ることができないというのは、食の安全問題ではっきりしました。今の自分の仕事の質をいかに高めていくか、このような時だからこそ真剣に考える時です。
 その上で、価値観を共有できる仲間を作ることです。一緒にビジネスをしていても、一方的に仲間を頼ったり、自分の主張だけを繰り返す仲間ではなく、自分自身のことも仲間のことも同じように一所懸命になれる人、他人の話をしっかり聞ける人、どこかホッとさせるハートを持ってる人、そんな仲間をより多く見つけることです。今回の不況は底なしとまで言えるものですから、いつでも顔を合わせることができる同じ町、近くの町に住むそんな仲間が流通や金融の問題を一緒になって進めていくことが必要です。例えば、企業への融資も、地域の金融機関と商工会議所や税理士会という組織が企業と一体となって、健全な資金を健全な企業に融資していく。銀行も融資条件を過度に厳しくするのではなく、また企業側も銀行に対してオープンな姿勢をとり、経営上の問題を関係者が共に考えていくような仕組みができればよいのではないかと思います。社長もゴルフにいく時間は当分あきらめた方がよいかもしれません。国内では市町村合併で多くの市町村が消滅してしまいましたが、合併する前の規模の行政単位がちょうど良いのではないでしょうか。いっそのこと、市町村合併もいったんご破算にした方がよいかもしれません。
 そして、これからの主役は地方になります。都会ではリストラで多くの人が失業します。そうでなくてもストレスをたくさん溜めて心身ともに疲れた都会の人たちにとって、自然が身近にある地方は精神的なゆとりをもたらす場所です。世界中から食料を輸入することも難しくなるでしょうから、農業や漁業といった第1次産業の復活が必要になります。この産業は高齢化が大変進んでいるところですから、いくら人がいても足りないくらいになるでしょう。皆が自然の中で元気に暮らすことができるようになると、医療費の問題も解決します。ちょっと前のようなグルメ生活は無理でも、新鮮で健康的な食事をすることになります。また住宅は余っていますから、多少の修繕は必要でも、住の問題はあまり考える必要はありません。農業だけでなく、工業も同じようになります。海外進出により閉鎖されていた工場が復活することになるのではないでしょうか。職人芸の伝承という問題が指摘されますが、まだ現役の方もたくさんいらっしゃいますから、今なら間に合います。機械類は多少古くなっていますが、持ち前の勤勉さと器用さでカバーできるはずです。そうして世界に求められる高品質の製品をかつてのように送り出すことになりそうです。日雇い派遣の若者にとって、農業でも工業でも、安定的に仕事ができるなら大歓迎なのではないでしょうか。このように考えてくると、地方に住んでいる私たちは、受け皿作りに大忙しになるはずです。
 世界の動きに動揺してる時間などありません。なぜ株が下がるのか、なぜ為替が変動するのか大まかに理解しておけばよいのです。当然、そのための勉強は必要です。それは、大学で講義を受けるようなものではなく、自分の感覚として身につけ、自分の眼で確かめるものです。本当はもう少し早くやっておくべきだったのかもしれませんが、こうなった以上仕方ありません。今大切なのは前向きな姿勢です。悲観的になる必要はありません。つらい時だから、明るくやっていきたいものです。80年前の世界大恐慌の後に日本が辿った不幸な道は絶対避けて、新しい日本を作らなくてはいけません。まさに「坂の上の雲」です。

▲明るく元気に
 やや簡単すぎた部分も、非現実的と思われる部分も、楽観過ぎた部分もあるかもしれません。しかし、目の前に広がる明日の世界経済は、大変厳しいものであることは間違いなさそうです。ここは開き直って、現場の勉強して、仲間を作って、お客様の心を認めて、明るく進んでまいりましょう。今大切なことは、発想の転換です。多少失敗しても、それが前向きであればおおらかに捉えてまいりましょう。チャップリンが言ったように、「人生に必要なものは、勇気と夢と少しのパン」です※。私どもの事務所もそうでありたいと思いますし、そのようなお客様と一緒に仕事をしてまいりたいと思います。

 最後に、このように私どもが感じることができるようになった藤原塾はじめ多くの方々との出会いに感謝いたします。



※チャップリンが代表作「ライムライト」の中で、「人生に必要なものは、勇気と夢と少しのお金だ」と言っています。小泉元首相も国会の中でこの台詞を取り上げたそうですが、実はこの「少しのお金」と言う表現は実に微妙なのです。「サムマネー」ではないのです。英文では下記です。
Yes, life is wonderful, if you're not afraid of it. All it needs is courage,imagination,… and a little dough
 最後の、doughとは、練り粉、生パンのことで、俗語としてお金という意味もあります。だからお金で良いのだではなく、言葉の深みを理解すべきですし、実際の台詞は…とあるように、間があり、littleに聞こえるという説もあります。つまり、「金なんていらない」とチャップリンは言いたかったのではないかということです。私もそんな風にとりたいと思います。
(チャップリンの言葉に関連して)
http://www.city.usuki.oita.jp/modules/usuki_back/03/pdf/03_590.pdf
http://www.1mame.net/chaplin.html

[2008/10/11]

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