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8月13日のニューヨーク市場では、米国10年国債利回りが前日の2.46%から2.41%へ低下したにもかかわらず、ドル円相場は同102円25銭から102円40銭へと円安・ドル高に振れました。これまでのドル円相場は、日米金利差を意識して米国債利回りが低下(上昇)すれば円高・ドル安(円安・ドル高)に動くという展開が続いてきたのですが、もしかすると昨日の日本の4〜6月期GDPが大幅に落ち込んだことをきっかけに、為替と金利の相関関係が弱まってくるかもしれません。
今年に入ってからのドル円相場は100円台前半でもみ合う方向感のない展開が続いてきました。これは日本の金利が低位安定している一方、米国では失業率の低下や雇用者数の増加を背景に利上げ懸念が台頭してきているものの、実質賃金の上昇が鈍く雇用実態は表面上の指数ほど良くないとの見方が根強くあることから長期金利の動きが安定しているということが大きな理由です。もし、今後もドル円相場が日米金利差を意識して動くならば、100円台前半でのもみ合いが続く公算が高いということになります。
しかし、最初に触れたとおり事情は変わってきているようです。昨日発表された日本の4〜6月期実質GDPは、消費税増税の影響で個人消費が大きく落ち込み、年率6.8%のマイナス成長となりました。これにより今年度のGDPは、政府や日銀の見通しには届かない可能性がきわめて高くなっています。さらに秋以降消費者物価上昇率も鈍化が見込まれることから、このままでは政府・日銀が描く経済シナリオと現実との間のギャップが表面化してきそうです。
そこで、10月にも日銀がこれまでの見通しを修正して、金融緩和拡大に踏み切るのではないかとの見方が市場で徐々に広がっているのです。さらに同じ10月にはFRBが国債の買い入れを停止すると予想されています。こうしたことから、為替市場の参加者が、日米金利差ではなくベースマネーの絶対額の比率、簡単に言えば、日米の通貨供給量つまり円とドルの流通量の比率の変化に注目するようになると考えられるのです。とすれば、需給関係から相対的に流通量が増加する円が売られてドルが買われやすくなるでしょう。
来年10月からの消費税率の再引き上げについて安倍政権は12月までに決断しなければなりません。時間が限られる中で再引き上げの環境を整えるため、今、財政金融両面から可能な限りの景気テコ入れ策を検討していると思われます。したがって、今後、日銀に対する政府からの圧力が強まってくると予想されます。そうした動きが顕著になってくれば、1ドル=110円程度までの円安が視野に入ってくるのではないでしょうか。
アベノミクスである種の刺激はあったと思いますが、経常支出にもあるように日本経済には質の変化が起きていることも観察しておく必要があります。加えて、歯止めがかからない財政悪化の問題も深く底に横たわっています。
そこで気になるのは、日銀の金融緩和です。前回ほどのインパクトを起こすのは難しいのではないかと想像します。
いずれにしても、円高に注目ですね。
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