F&Aレポート
F&Aレポート 2021年1月30日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
独メルケル首相演説 2020年スピーチ・オブ・イヤー リーダーのことば 「共感」を呼ぶスピーチ『原稿』
前回のレポートでご紹介したドイツで「2020年スピーチ・オブ・イヤー」を受賞した、メルケル首相演説のスピーチ原稿 日本語訳をご紹介します(一部割愛)。演説の内容、言葉の選び方に注意してみていきましょう。非日常的な挨拶やスピーチといったシーンだけでなく、日頃の情報伝達にも参考になることがあります。
<共感を得る主なポイント>
- 「私たち」という言葉が、13分の演説中22回使われている。(約35秒に1回。一体感がある)
- 国民の暮らしについて具体的な描写、説明がある(明確にイメージしやすい)
- 一息で言い切れるシンプルなメッセージが随所にある(印象に残りやすい)
- 「あなたは」という二人称が多い。(ひとり一人に呼びかけている感じが伝わる)
- 首相でさえも、ドイツ国民の一人なのだと感じられる(上から目線ではない姿勢)
親愛なる市民の皆さん、
私たちが現在、流行のどの地点にいるのか、連邦政府と州が地域社会の全員を保護し、経済的、社会的、文化的損害を制限するために何をしているのかを説明したいと思います。また、なぜそれが必要で、一人一人がどのように貢献できるのかを示したいと思います。(中略)
ドイツには優れた医療制度があり、おそらく世界でもトップクラスです。それは私たちに自信を与えてくれます。しかし、病人が多すぎると、病院も完全に圧倒されてしまいます。(中略)
まず、私はこの機会を利用して、医師として、看護サービスで、または私たちの病院や一般医療部門で他の職務で働くすべての人に触れたいと思います。あなたは私たちのために、この戦いの最前線にいます。あなたは病気の最初の感染者と接し、感染症の重症度を知る立場にあります。毎日人々のために新たに仕事に行っているみなさんがしていることはとても素晴らしいものであり、心から感謝しています。(中略)
制限がすでにどれほど劇的かは承知しています。イベント、見本市、コンサート、そして当分の間、学校、大学、幼稚園、公園での遊びもありません。連邦政府と州政府が合意した閉鎖が、私たちの生活と民主主義のイメージにどれほど影響するかも承知です。これまでわが国には存在しなかった制限なのです。
旅行の自由と移動の自由のための権利のために強く戦った私から保証させてください。そのような制限は、必要な場合にのみ正当化されるのです。民主主義においてこの権利は軽視されるべきではありません。しかし、命を救うために現時点では不可欠なのです。(中略)
また、ほとんど感謝されない人々にも感謝をさせてください。現在スーパーマーケットのレジにいらっしゃる方、棚を補充する方々は、現在最も困難な仕事をしています。あなたの仲間の市民のためにそこにいて、文字通り店を続けてくれてありがとう。(中略)
伝染病が私たちに示していることは、私たち一人一人ががどれほど弱い存在か、他者の思いやりのある行動にどれだけ依存しているかを。一人ひとりにかかっています。私たちは、ウイルスの拡散を受け入れる運命にありません。私たちには救済策があります。お互いの距離を空けなければなりません。ウイルス学者のアドバイスは明確です。握手はしないでください。しっかりとひんぱんに手を洗ってください。他人から少なくとも1.5メートル離れてください。そして危険度が高いお年をめした方との接触は可能な限り避けてください。
私たちに求められていることを達成することがどれほど難しいかは承知しています。特にこのような緊急のときは、私たちはお互いに近くにいたいものです。近くにいたり触れることの大切さを私たちは知っています。しかし残念ながら、現時点ではまったくその逆が正しいのです。(中略)
不要不急の善意の訪問、旅行、これらすべては伝染につながる可能性があり、行うべきではありません。専門家が、祖父母と孫は今一緒にいるべきではないというのには理由があります。
不必要な出会いを避ければ、病院で毎日より多くの症例に対処しなければならない方々を助けることになります。このように命を救うのです。(中略)最新技術を利用してウイルスの社会的影響に対抗する方法は多くあります。孤独にさせないために祖父母のためにポッドキャストを録音している孫達がいます。
私たちは皆、愛情と友情を示す方法を見つける必要があります。Skype、電話、メール、そして以前のように手紙を書くことです。郵便は配達されます。(中略)コミュニティとしてできることはもっとたくさんあると確信しており、お互いを一人にしないことです。
私からのお願いです、現在適用されているルールを守ってください。(中略)お願いです、噂を信じないでください。常に多くの言語に翻訳もしている公式メッセージのみを信じてください。
私たちは民主主義の国です。強制の上ではなく、知識と参加の共有の上に生きています。これは歴史的な課題であり、一致団結しなければ達成できません。
私たちがこの危機を克服することは間違いありません。 犠牲者はどれくらいになるのか? 愛する人を何人失うのか? その答えの大部分は私たちの手にかかっているのです。 私たちは今お互いに決意を持ちあい、 制限を受け入れ、共に支えあうことができます。
このようなことを一度も経験したことがなくても、心をこめて賢く行動し、それによって命を救わなければなりません。 例外なく、それはすべて個々人、したがって私たち全員にかかっています。 あなた自身とあなたの愛する人たちを大切にしてください。皆様ありがとうございました。