F&Aレポート
F&Aレポート 2019年6月10日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
わくわく日本語講座6 〜「喜びの表現」
「これを知るものは、これを好むものに如かず。これを楽しむものは、これを好むものに如かず」という有名な孔子の教えがありますが、この言葉にはさらに続きがあります。
それは「これを喜ぶものは、これを楽しむものに如かず」という一文です。物事の習得は「知る、好き、楽しむ」よりも「そのこと(もの)自体を喜ぶ」ことが一番なのだということなのでしょう。仕事や、習い事、趣味などに置き換えるとよくわかります。
さあ、苦虫を噛み潰したような表情で物事に立ち向かうのは平成まで。令和の時代は上手に「喜び」ながら難問に対処しませんか?
今回は、感情表現辞典から小説の中で使われている「喜びの表現」を特集します。
- まぶしいような深い喜び 人間にはどうしてこんなに深いよろこびが与えられているのだろう。まぶしいような。(武者小路実篤:友情)
- 魚が水に遭ったような喜び 魚が水に遭ったような(中略)その喜び(有島武郎:生れいずる悩み)
- 野獣が山に放たれたような喜び 野獣が山に放たれたような(中略)その喜び(有島武郎:生れいずる悩み)
- 太陽が西を見つけたような喜び 漁夫達の心の勇み(中略)太陽が西を見つけ出したようなその喜び(有島武郎:生れいずる悩み)
- 喜びが音楽のように残る 女に死んだように眠ったと言われた、その喜びの方が、若々しい音楽のように残った(川端康成:眠れる美女)
- 皮膚の下から喜びが照り出す やや蒼白い皮膚の下から悦びが照り出すような表情(宮本百合子:伸子)
- 酔うような強い歓喜 全くどうして、酔うような強い歓喜が自分を打ち開くのであろう(椎名鱗三:永遠なる序章)
- 気が狂うほど喜悦する 彼が気が狂うほど喜悦させてやることにも興味が持てた(谷崎潤一郎:鍵)
- スーッと胸がすいて愉快になる 一寸の間、びっくりしていた心はスッと胸がすいて、愉快になった(網野菊:小豆)
- 途方もなく嬉しい 妻よ、これは男の子だ 途方もなく嬉しい日だ(立原正秋:冬の旅)
- 嬉しくて胸がときめく 瞬間、激しく、私の胸はときめいた。まるで二人きりの秘密を持ったように嬉しかった(外村繁:夢幻泡影)
- 切ない胸の中がからりと晴れるような心持ち 切ない胸の中が、からりと晴れるような心持ち(宇野千代:おはん)
- 曇りなく笑う 当の碧郎はくもりもなく笑っている(幸田文:おとうと)
- 弾みのある表情 はずみのある感情は、たるんでいた皮膚をひきのばしてくれるように爽やかである(森田たま:続もめん随筆)
「喜べば、喜び事が、喜びながら、喜びつれてくる」と言います。数限りなくある「喜び」の表現を、日々の中にあえて取り入れてみましょう。