F&Aレポート
F&Aレポート 2018年4月20日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
2018年の新社会人「SNSを駆使するチームパシュートタイプ」
人事労務分野の情報機関である産労総合研究所では、毎年新入社員のタイプと新社会人の採用・育成の研究を発表しています。ちなみに、昨年(平成29年度)の新入社員のタイプは「キャラクター捕獲ゲーム型」でした。「キャラクター(就職先)は数多くあり、比較的容易に捕獲(内定)出来る。一方で、レアキャラ(優良企業)を捕まえるのはやはり難しく、すばやく(採用活動の前倒し)捕獲するためにはネット・SNS を駆使して情報収集し、スマホを片手に東奔西走。必死になりすぎてうっかり危険地帯(ブラック企業)に入らぬように注意が必要。はじめは熱中して取り組むが、飽きやすい傾向も(早期離職)」ということでした。これに対して、今年(平成30年度)の新入社員は下書きの通りです。
2018年度(平成30年度)新入社員のタイプ【2018年度新入社員の就職活動の特徴と今後の育成のヒント】
「SNSを駆使するチームパシュートタイプ」
―SNSを活用してグループの協力関係を作りスピーディーに活動―
オリンピックで金メダルを獲得した女子チームパシュート。3人が順序を入れ換えながらリンクを疾走する姿が記憶に残る。今春の新入社員は、ここ数年続く売り手市場傾向を追い風にスピーディーに就職活動を終えることができた。ひところの就職「氷」河期とは様変わりである。とはいうものの、学生にとって就活は学生時代の一大事業であることに変わりはない。少数の仲間同士でSNSを活用し、綿密な情報交換で協力関係を構築し、内定というゴールをめざした。就活は短期決戦だったが、入社すればおよそ40年もの長期戦である。自分なりのテーマをもって仕事をする努力を怠れば周回遅れも。
■厚生労働省と文部科学省の調査によれば、今春の大卒新入社員の内定率は91.2%(2月 1日時点)と、調査開始(平成9年3月卒)以来の最高値を記録した。平成23年3月卒の77.4%から7年連続増加したことになり「売り手市場」傾向の定着 が見られる。反面、有効求人倍率が上昇に転じた平成22年以降、大卒新入社員の3年以内の退職も30%台で推移している(厚生労働省「新規学卒者の離職状況」)。(公財)日本生産性本部が実施する新入社員意識調査では、「買い手市場」の不況期には新入社員の本音が見えにくくなるが、「売り手市場」になると顕在化する傾向にあるという。入社後は、定着へ向けて、個々の資質を見きわめた丁寧な育成が必要となる。■2015年に起きた大手広告代理店の新入社員の過労自殺は今なお学生たちの懸念材料として尾をひいており、その後の相撲界のパワハラ事件なども手伝い、会社や上の世代への不信感をぬぐえず、就活や仕事に前向きになれない傾向としてくすぶっている。採用担当者からは「タフさの不足」を指摘する声も聞かれるが、売り手市場で新入社員はじめ若手社員の本音が見えやすくなったこの時期は、多くの企業で高度経済成長期に形成された「働き方」を見直す好機とも言えよう。また今年の就活では、おりからのAIの実用化によって「なくなる仕事」に就いてしまうのではないかという懸念をもつ者も目立った。
〜新入社員研修の現場から
多くの場合、新入社員研修での昼休みは、班ごとに同じ昼食(企業側が準備した弁当)を食べますが、それぞれが顔を付き合わせているにも関わらず、ほぼ全員がスマホをいじっています。昼休憩でも会場はシーンとしていることも珍しくありません(この光景はここ数年のことです)。弁当を食べるときもスマホ、食べ終わってもスマホという具合です。
昨年も今年も、新入社員のタイプを特徴づける大きな要素がSNSです。そのせいか、彼らの多くは電話応対が苦手です。友達同士の連絡も電話よりもメールやラインが主流なので、彼らにとって「電話」は古くて怖い機器なのだそうです。ただ、コミュニケーションの大切さはよくわかっています。新入社員とは、常識もカルチャーも違うことを踏まえて、
年長から寄り添い、オープンに話し合うことから始まるのかもしれません。