F&Aレポート
F&Aレポート 2018年1月20日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
「意見」を見直す フィンランドの小学生に学ぶ「批判的思考力」 意見を見直す「クセ」を身につける
筋の通った論理と、聞き手を引きつける豊かな表現力があれば、聞き手は自分の意見を納得してくれるはず……。本当にそうでしょうか。
一度立ち止まって考えてみましょう。そもそもあなたの「意見」は、絶対的に正しいものでしょうか。一般的にみても、理解される内容でしょうか。もしかしたら、あなたが「常識」や「当然」、「正しい」と思っていることは、あなたの「思い込み」かもしれません。
どんなに素晴らしい意見やアイデアでも、つねに立ち止まり「本当に?」と、自分に問いかけるクセをつけたいものです。今ある発想や論理や表現は、ひとりよがりなものになっていないか。「批判的思考力」で見直すことで、不足していたことや思い込んでいたことに気づき、さらなる改善点が見えてくるはずです。
思い込みをなくすには、つねに複数の可能性を考えるクセを身につけることが大切。「絶対そうだ!」と決めつけず、「もしかしたら…。まてよ…。いや、もう一度…」と、いくつもの案を準備しておくのです。
たとえば、右のイラストを見てください。女の子が虫眼鏡を使って地球儀を覗き込んでいます。彼女は、なぜこんなことをしているのでしょう。考えられる可能性を3つ以上、挙げてみましょう。(学力トップクラスの国フィンランド式・思考トレーニング 諸葛正弥監修 PHP文庫)
- 社会の宿題で、一生懸命調べものをしていた(のかもしれない)
- 映画で見た小さな国を探して、ワクワクしている(のかもしれない)
- 虫眼鏡で遊んでいたら、文字が大きく見えるのでビックリした(のかもしれない)
また反対に、数多くの情報の中から、必要なものだけを的確に選び取るときにも、批判的思考力は重要な役割をはたします。たくさんの情報が氾濫している状態では、核となる本質をきちんと理解できないからです。
フィンランドの小学校では、情報を正しく選び取る練習に、とてもユニークな方法をとっています。使用するのは、なんと算数の文章問題。これを使って、正しい情報を導くために必要な情報はどれか、生徒達に考えさせるのです。実際にやってみましょう。
下の問題文を見てください。文章の中で、ちがうことに置き換えても解答が変わらないのはどの部分でしょうか。「トム君」という名前か、サンドイッチの値段か、買った本の種類か、簡単な問題ですが、必要な情報を見極める練習には最適なのです。
問題が聞いているのは、「いくらお金を使ったか」ということです。ということは、サンドイッチと本の値段さえ変わらなければ、解答に影響はありません。つまり、お金を使ったのが「トム君」ではなく「花子ちゃん」でも、本屋で買ったのが写真集でなく小説だったとしてもいいわけです。
トム君は、お昼に3ユーロのサンドイッチを買いました。簡単なことのようですが、ビジネスにおいては案外これができていないことが少なくないようです。会議で発表をする、指示命令を伝言する、上司に現状報告をするなど。真意や正解を導くために、何が必要な情報なのかを選び取り、的確に表現するのは重要なことです。批判的思考力をきたえ、まずは見直す力、選び取る力を養っていきましょう。
それから本屋さんで7.5ユーロの写真集を買いました。
トム君が使ったお金は全部でいくらでしょう?