F&Aレポート
F&Aレポート 2017年12月20日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
外国人と働き暮らすために 1
帝国データバンクは、2017年上半期の「人手不足が原因の倒産件数」が4年前の2.9倍になったと発表しています。日本商工会議所がまとめた「人手不足等への対応に関する調査」では、人員の過不足状況について中小企業の6割が「人手不足」と回答しています。人口減少が止まらず、高齢者と女性の労働参加で解決できないとなれば、人手不足はより深刻になっていくでしょう。今後、足りない人手をどのように確保していくのかという議論に、外国人を雇用するといった選択肢もあがってくるにちがいありません。そんな中で、外国人とどのように共生していくのか、外国人労働者取り巻く壁と、外国人のキャリア意識について2回にわたり特集します。(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 産業カウンセリング)
1.外国人労働者を取り巻く5つの壁
- 政策的な壁 難民対策で見られるように日本は外国人の受け入れに消極的です。外国人に関連する法律「入管法」などでも、在留資格がかなり厳格に管理されています。
- 定着の壁 長期雇用で正社員を雇用しようとする日本企業と、キャリアアップの一環として日本企業に在籍する外国人では、定着に対する意識がちがいます。母国への帰国にも意識の差があります。
- 企業意識の差 積極的に外国人を活用したいからではなく、人手が足りないから仕方なくといった意識を持つ日本企業も少なくありません。一時的な「助っ人」としての採用に困る外国人もいます。
- 日本語の壁 多くの日本人が日本語しか理解しないため、日本企業で働くためには日本語の習得が必須です。しかし漢字になじみのない国の人にとって、読み書きは簡単なことではありません。
- 多様性の壁 国や人種、宗教による文化的なギャップや個人の考え方の違いなどが混然一体となり、どのように歩み寄ればいいのかが互いにわからないケースも少なくありません。
東京外国人雇用サービスセンターは、厚生労働省の傘下にあり、外国人留学生および専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人の就職支援をしています。「職業相談支援」「面接や書類対策を含む就職ガイダンス、就職支援セミナー」「外国人向け就職面接会、インターシップ」「在留資格等に関する相談」などが、主な支援内容です。
■どこの国籍を持った人の相談が多いのか。国籍による特徴などはあるのか
近年、増えているのは、ベトナムとネパールの国籍を持つ方です。中国、韓国、台湾の方は過去からの実績もあり、ベトナムやネパールの方よりはスムーズに就職が決まるように感じます。また、ベトナムやネパールの方の日本語レベルの低さが就職への障害になっている印象です。
■ 何をもって「定着」と考えるのか。外国人を採用する際、日本企業が気をつける点はどのようなことか
決定権のある人の理解が重要。外国人従業員は面倒だとか、あまり役に立たないといった固定観念が上層部にあると、受け入れが難しい。日本人は、一つの会社で働き続けようと考える人が多いのですが、外国人にはそんなイメージはありません。キャリアのステップとして、2?3年で辞めていく人も多いし、最終的に経営者になりたい人も少なくありません。何を持って「定着」というのかが問題。本人は3年を目処で一生懸命やっていて、3年もしたら母国に帰りたいと思っている。日本人的な感覚としては「冷たいな」と思うかもしれません。しかし、日本企業のノウハウを3年で学んでもらえば、自社の海外展開の橋渡し役として活躍してくれる可能性もあります。採用時と条件の違いからトラブルになるケースが目立ちます。外国人を安く使える便利な労働力だと考えていると、トラブルが起きてしまいます。