F&Aレポート

F&Aレポート 2017年11月10日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

はなす・きく・よむ(11)アナウンサーが気をつけていることば

1.「大」の読み方

 「大」は、後に続く言葉によって、読み方が「おお」になったり「だい」になったりします。原則としては、その後の熟語が漢語(音読み)なら「だい」、和語(訓読み)なら「おお」ですが、例外もあります。NHK放送文化研究所編「ことばのハンドブック」では、「大」がつく言葉についての解説が2ページにわたっています。以下はその一部です。

(1)「だい」と読む
 大家族、大多数、大企業、大好物、大部分、大規模、大動脈、大事故、大惨事、大音声、大納会、大都会、大方針、大賛成、大接戦、大極殿、大人物、大洪水、大法廷 ほか

(2)「おお」と読む

 大掃除、大風呂敷、大助かり、大入り袋、大慌て、大広間、大当たり、大鳥居、大金持ち、大酒飲み、大津波、大花火、大晦日、大威張り ほか

(3)慣習的に「おお」と読む 漢語が準和語になっているもの

 大火事、大御所、大袈裟、大地震、大道具、大時代、大番頭、大入道、大騒動、大一番、大所帯、大げんか ほか

2.アナウンサーならではの読み方

「8.5メートル」
普通は「はってんごめーとる」と読みますが、アナウンサーは「はちてんご」と発音するようにしています。なぜなら、聞き取りやすいからです。また、同じような理由で、時間の「半」も、「30分」と表現します。「12時半になります」とは言わず、「12時30分になります」と言います。

3.よく使われる単語、慣用句

  1. 「他人事」たにんごとではなく「ひとごと」
  2. 「相殺」そうさつではなく「そうさい」
  3. 「委嘱」いたく(委託)ではなく「いしょく」
  4. 「過渡期」かどきではなく「かとき」
  5. 「手向け」てむけではなく「たむけ」
  6. 「在家」ざいかではなく「ざいけ」
  7. 「極右」ごくうではなく「きょくう」
  8. 「入会権」にゅうかいけんではなく「いりあいけん」
  9. 「入水」水に入るときは「にゅうすい」で自殺のときは「じゅすい」
  10. 「刃傷沙汰」にんしょうざたではなく「にんじょうざた」
  11. 「遊説」ゆうぜつではなく「ゆうぜい」
  12. 「古文書」こぶんしょではなく「こもんじょ」
  13. 「異にする」いにするではなく「ことにする」
  14. 「相好を崩す」そうこうをくずすではなく「そうごうをくずす」
  15. 「奇しくも」きしくもではなく、「くしくも」
4.使い方を誤れば致命傷

(1)「さすが海千山千ですね」 意味は「いろんな経験を積んだ人」ですが、その経験によって「ずるくしぶとくなった人」を指しています。こうした言葉で相手を褒めようものなら、時代劇の悪徳商人が「お代官様も悪ですね」と言うのと変わりません。

(2)「辺鄙なところで事件がおきました」 「辺鄙」という単語は一般的な日本語ですが、その地域や住んでいる人に配慮を欠いた表現です。

(3)「片手落ち」 差別表現として取りあげられることが多い言葉ですが、障害を持つ人 に対して使わなければ差別表現ではありません。しかし、その言葉を聞いて気分を害する人がいるかもしれません。「公平ではない」などと言い換えた方が無難です。放送にふさわしくない言葉かどうかというよりも、そうした言葉を発した人の立場、センス、考え方が問われます。これは放送だけでなく日常会話でも同様ではないでしょうか。