F&Aレポート

F&Aレポート 2017年7月10日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

日本語トレーニング はなす・きく・よむ(7)今年、流行りの「忖度(そんたく)」って、そもそも?

 森友学園問題でよく耳にするようになった「忖度」。この字の読み方は8割以上の人が「すんど」と答えるそうです。それにも関わらず、Twitterではたびたびトレンド入りをし、「goo辞書」の検索ランキングでは1位(3月29日)にランクインしていると言われ、今年の流行語大賞になるという噂まであります。「忖度」の意味や由来について調べてみました。(参考資料 語彙力がないまま社会人になってしまった人へ 山口謡司著

1.「忖度」室町時代では「じゅんど」と読んでいた
 室町時代から江戸時代にかけては「じゅんど」と読むのが正しいとされてきました。明治時代を過ぎた頃から、「そんたく」と読むのが正しくなりました。読み方は変われど、意外と昔から使われてきたことばなのだということがわかります。

 日本には漢字の読み方が4種類あります。そのうち基本となる「呉音(ごおん)」と「漢音(かんおん)」の2つがあります。たとえば、「文」という漢字には「もん」と「ぶん」という読み方があります。これは、同じ漢字でも「呉音」「漢音」という読み方の区別があるからです。

 日本には昔、書き文字がありませんでした。そこへ漢字が入ってきて、文書や書籍が書かれるようになるわけですが、794年に平安時代が始まるくらいまでは、漢字の読み方は主に「呉音」と呼ばれるものが使われてきました。

 これは、中国の上海、南京周辺の呉の地方で使われていた漢字の発音によるものです。上海周辺は、揚子江の下流で、紀元前の昔から文化が発達していました。ここから船を浮かべると、対馬海流に乗り、朝鮮半島や九州までたどり着くと言われます。

 呉の地方で使われていた「呉音」の語彙が、日本に入ってきたのは自然なことだったのです。「忖度」を「じゅんど」と読むのは、まさにこの「呉音」の読み方です。

 ところが、平安時代の遣唐使の交易は「長安」でした。長安は「漢」と呼ばれた地域です。長安は、シルクロードを経て、インドやチベット、遠くは今のトルコやアフガニスタン辺りからも人々が訪れる一大文化の中心地でした。そこで使われていたのが「漢音」という漢字の発音です。

2.「相手の心を推し量る」から「上役の意向を推し量る」へ変化
「忖度」の意味は、「他人の心を推し量ること」です。「相手の真意を忖度する」というように使います。「相手は本当のところ、どんな風に考えているのかな」というように推量するということです。「忖」は、人の心を推測すること。「度」は「はかる」こと。つまり「忖」「度」ともに「はかる」です。  「忖度は最近になって、“上役などの意向を推し量る”場合に使う用法が増えてきた」「おべっか、へつらい。上の者に気に入られようとして、その意向を推測する」など、ちょっと特別な時に使われるようになったということです。そういった用法で「忖度」が使われるようになってきたのは、ここ十数年の話しです。(三省堂国語辞典編集委員 日本語学者飯間浩明氏)

「消費税の引き上げは避けられないが、いまは国民を刺激したくない。しかし、ほおかむりも無責任」。そんな首相の思いを忖度したような党税調。(朝日新聞社説 2006年12/15)

「その籾井氏が政策に関わるニュースに注文をつければ、どうなるか。権力を監視するジャーナリズムの役割が十分に果たせるのかといった疑問も浮かぶ。会長の意向を忖度し、政府に批判的な報道がしにくくなるのではないかとの不信感も出て来るだろう」。(朝日新聞社説 2014年5/8)

 “上役の意向を忖度する”という使い方は、“忖度”の用法の一部に過ぎないものの、マスコミの影響で、今後精力を拡大していきそうな用法です。また一連の事件により、“忖度”という言葉のイメージも変わりました。「もっと人の心を忖度しなさい」というと、悪いイメージになるかもしれません。



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