F&Aレポート
F&Aレポート 2017年2月20日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
やる気を動かす「ラダー効果」〜コピーをとるのは「作業」か「仕事」か
■「作業」と「仕事」のちがい
先日、あるゴルフ場の全スタッフを集めた研修で「作業と仕事のちがい」について、グループで考え発表してもらいました。以下のような回答が得られました。
- 日々の決まりきった仕事が「作業」、考えながら行うのが「仕事」
- 言われた通りにするのが「作業」、自分で工夫して改善するのが「仕事」
- 何も考えずにできるのが「作業」、仲間と話し合い協力するのが「仕事」 など
そこで、「『コピーをとる』という仕事は『作業』でしょうか、『仕事』でしょうか」と、尋ねてみました。意見は分かれました。「作業」という人もいれば、「仕事」という人もいます。そこで再び議論になりました。
結局、「ただ言われたままに部数をコピーするのであれば『作業』、資料の目的を把握し、濃淡、拡大・縮小、白黒・カラーを調整する。はては閉じ方も工夫を凝らす…ということであれば『仕事』」ということになりました。
ここで注意したいのは、一見「作業」と思われる中にも「仕事」は存在し、「仕事」に高めていくところに「やる気」も生まれるのではないかということです。
■ 「ラダー効果」とは
マネジメントについて知識のある人なら「レンガ職人」の話しは、聞いたことがあると思います。上位の目的を示すことで同じ仕事でも、やる気が変わるというお話です。これは心理学では「ラダー効果」と言われます。
旅人がある村で4人のレンガ職人に会いました。つまらなさそうにレンガを積んでいる職人もいれば、楽しそうにレンガを積んでいる職人もいます。旅人は興味津々で、それぞれ「あなたは何をしているのですか」と質問してみました。
一人目の職人「見りゃ分かるだろ、レンガを積んでいるんだ」
二人目の職人「今は壁をつくっています」
三人目の職人「私たちは大聖堂を建てています」
四人目の職人「私たちは人々の心を癒す聖地を創っている最中です」
みんな同じレンガを積んでいるのですが、その仕事に対する捉え方が違います。
一目の職人は、「レンガを積む」という作業レベルでしかこの仕事をみていません。二人目の職人は「壁をつくる」という課題レベルでこの仕事をみています。三人目の職人は「大聖堂を建てる」という業務目的でこの仕事を捉え、四人目の職人は「人々の心を癒す聖地を創る」という大聖堂を建てる目的を仕事だと捉えています。
つまらなさそうに見えた職人は、一人目の職人のことです。目的がわからないから、「やらされ仕事」になっています。楽しそうにレンガを積んでいたのは三人目と四人目の職人でしょう。目的や目標が見えているから、仕事の価値がわかるのです。
ラダーとは、はしごという意味です。仕事の意義をひとつずつ上位の概念で捉え、はしごを登るように視点を高くしていくことで、仕事のモチベーションを高く持つことができるというお話しです。
高い視点を持たせるのはリーダーシップとして必要なことですが、リーダーから与えられなくても自らそんな視点を持つように努力をすればいいのです。目的と目標を明確にして作業ではなく仕事を。仕事の価値を高めて、やる気をアップさせたいものです。