F&Aレポート

F&Aレポート 2017年2月10日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

日本語トレーニング はなす・きく・よむ(2)
思いやりが問われる葬儀や弔問のことば/否定形の副詞


1.葬儀や弔問での言葉づかいは注意が必要です。次の中でふさわしくないものはどれでしょう。

  1. 葬儀の弔辞「氏は、常に慈愛のこもった眼差しで部下を見守る人でした」
  2. 葬儀の弔辞「○○君、きみが人間教育に注いだ情熱は……」
  3. 葬儀の追悼の辞「氏は○○産業の技術部長として……」
  4. 弔問の挨拶で「このたびは、とんでもないことで……」
  5. 弔問の挨拶で「あんなに元気でいらしたのに」
  6. 弔問の挨拶で「有能な人を交通事故で失うなんて……」
  1. × 弔辞は友人、知人の代表として故人に別れを述べるものです。したがって「氏は」「彼は」などと三人称で語ってはいけません。
  2. ○ 弔辞では「きみ」「あなた」あるいは、「○○さん」「○○くん」「○○先生」と呼びかけます。
  3. ○ 弔辞と違い、追悼の辞は会葬者に故人の業績や人柄を語るものなので、「氏は…」でいいです。
  4. ×「とんでもないこと」だから悲しんでいるのです。言わなくともいいような外交辞令で遺族の悲しみを増すのは思いやりがないことです。
  5. ×「元気だった」のは当たり前のこと。こんなことを言っても、遺族はなぐさめられはなしないどころか、かえって生前の姿を思い出し悲しみが募ります。
  6. × 弔問では死亡した原因を話題にしないこと。「何が原因だったのですか」と質問するのはもってのほかです。
2.副詞の間違いに注意。次の会話、文法的におかしいものがあります。
  1. 「けっして誉められないよ」
  2. 「まるで素晴らしい」
  3. 「てんでよくない」
  4. 「ぜんぜんイケるね」
  5. 「まるっきりすごいんだよ」
  6. 「まるで嘘みたい」
  7. 「とうてい楽勝だ」
  8. 「とてもすごいよ」
  1. ×
  2. ×
  3. ×
  4. ×
 日本語で難しいのが否定形の副詞です。中でも(1)(3)(4)(5)(7)の「けっして」「てんで」「ぜんぜん」「まるっきり」「とうてい」や「少しも」です。これらは次に「……ない」という否定形を伴う副詞です。肯定形や名詞を続けることはできません。

 ただし、慣用的に「てんで」「ぜんぜん」「まるっきり」「とうてい」は否定形だけでなく、「まるっきり失敗」「てんでだめ」というように否定的な意味の言葉にもつかわれ、

「てんで」は「非常に」とか「すごく」という意味で使われることもあります。

 (8)の「とても」も否定形を伴った使い方をしますが、これには「非常に」「大変に」という意味もあり、必ずしも否定的な使い方をしなければいけないものではありません。

 (2)(6)の「まるで」は、否定形とつなげれば「まったく……ない」という意味になりますが、ほかに「……のように」という意味でも使われます。いずれも肯定形には使われません。「うっかり日本語クイズ」 同文書院