F&Aレポート

F&Aレポート 2016年5月30日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

粋なボキャブラリーを増やそう「男梅雨、女梅雨」「降りみ降らずみ」「麦秋」〜意味を知って、使えることばを増やすことは、思考を豊かにする

1.「男梅雨と女梅雨」
 夏の季語「男梅雨、女梅雨」。これは梅雨時期の雨の降り方を対比させたことばです。激しく降って、晴れ間がのぞくのが男梅雨。しとしと降り続くのが女梅雨です。

 時代は「ジェンダーフリー」です。「性差による社会的差別、文化的差別をなくそう。性にとらわれず、それぞれの個性や資質に合った生き方を自己決定できる生き方を!」という考え方は素晴らしいと思うのですが、ことばには男女差別があるのかもしれません。特に、日本は男女のちがいを対比させたことばが多いように見えます。

 「陰陽」にはじまり、「男山、女山」「男坂、女坂」「男波、女波」「男時、女時(おどき めどき)」など。男は強く猛々しく、女はしなやかで優しい。また、男は形勢がよくなるときで、女はその反対。女性からみれば、納得し難い表現もままありますが…。

 季節は徐々に梅雨入りしていますが、雨の降り方にもいろいろあります。スーツが似合うナイスガイ風のビジネスマンが、「今日は男梅雨だね」なんて言うと、少々知的で細やかなセンスを感じさせます。

 文字通り、男梅雨はザーッと降って、カラリと晴れる陽性型、女梅雨はシトシト降り続いて、梅雨寒になりやすい陰性の雨ということのようです。最近では、女性っぽい男性も、男性っぽい女性も多いので「男梅雨、女梅雨」の表現がぴったりなのかどうかわかりませんが、言葉の上でイメージが伝わるうちは、まだまだ「男らしさ、女らしさ」が廃れていないということなのではないでしょうか。

2.「降りみ降らずみ」
 同じく夏の季語「降りみ降らずみ」。これは、傘をさすほどでもない雨が、降ったり止んだりするような天気です。

 はっきりと雨が降っているとは感じないのに、外に出ると霧を感じる。小さな雨が音もなく降る。傘をささなくても大丈夫そうだけど、歩いていると、やっぱり水滴が気になる。そんな雨です。しばらく、傘なしで我慢して歩いていたら、ポツポツと本降りになってくる。ふと気がつくと周囲の人も傘をさし始め、「仕方ない」と折りたたみの傘を開く。舗道も濡れて、車のタイヤがきしむ音も、しっとりと湿っている。

 「降りみ降らずみ」の天気が続く頃は、部屋の中まで湿気が漂い、やがて蒸し暑さが加わってきます。「今日は“降りみ降らずみ”だから、相合い傘で行きましょう!」なんて言うと、セクハラになるのかな。

3.「麦秋(ばくしゅう)」
 麦の収穫は、春から初夏にかけての時期です。麦秋の“秋”は収穫期を表すといわれています。

 稲は実るのですが、麦は熟れるのだそうです。この時期、近づくとむせるような香ばしい香りを放つ熟れ麦を刈り取るので、麦の秋だとか。

 初夏に“麦秋”と、わざわざ秋の時を使うのと同様、初冬の晴れた日を“小春”と呼びます。初冬の寒さの中のころんとした日だまりの“春”を感じ、あたたかい気持ちになります。昔の人の語感の優しさを思わずにはいられません。

 日本人は、とりわけ「春」と「秋」に季節の移ろいを感じたと言われています。麦秋もそうした日本人の心情が映されているのでしょう。

 最近では、麦畑を見ることは少なくなりましたが、ヨーロッパの田舎に行けば、ゴッホの「麦刈り」の風景がそのままあると言われています。

 ビアガーデンでジョッキを片手に「さすが、麦秋のビールは格別!」なんて言うと、どこかのビールの銘柄と勘違いされそうですけど。「秋」だけど「夏」の季語。学生時代の国語の試験で間違えたことも思い出されます。



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