F&Aレポート

F&Aレポート 2016年2月29日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

最近の研修から〜接客業の挨拶「ファーストアプローチ」と「キーワード」

 何気なく入ったお店で「いらっしゃいませ」と、店員に声をかけられてなんとなく気が引けて、さっさと店を出る……という経験は、誰にでもあると思います。店側からすれば、「お客様が来られたので挨拶をした」という当たり前のことをしただけなのでしょうが、客側からみれば、「いらっしゃいませ」と言われることで、「買わなければいけない」「買わされる」という脅迫観念にとらわれたような気持ちになることもあります。

「ファーストアプローチ」とは、そんな最初の「声かけ」のことを言います。どのようなタイミングで、どんな声かけをすれば、お客様にとって「快」となるのでしょうか。

1、“いらっしゃいませ”と“売上”の変化をみるという実験
 少し前のことですが、あるデパートで「“いらっしゃいませ”をまったく言わなかったら、売上はどう変化するか」という試みがあったそうです。一定期間、「いらっしゃいませ」を言わないでいたら、売上が上がるのか、下がるのか、実験をしてみようということになったのです。それは、先に述べたように、「いらっしゃいませ」を言うことによって、お客様の購買機会を逃しているのではないかという、現場からの声があったための試みでした。

 果たして、結果はどうだったか?そのときの実験結果では、「いらっしゃいませ」を言わない期間の売上は激減したそうです。

 「いらっしゃいませ」を言われれば、ある種の居心地悪さを感じることもあるけれど、言われなければ言われないで、お客様は「無視されている」「お客だと思われていない」「店員としてやる気がない(この店はやる気がない)」などの、不信感を抱きます。ファーストアプローチの難しさを物語る試みでした。

2、キーワードをいくつ持っていますか
 大型商業施設の各店舗からマネージャークラスが参加して、「接客の接遇を見直す」という研修を行ったところ、この「ファーストアプローチ」の難しさが話題になりました。

 同じ接客業でも、飲食店とブティックでは当然、ファーストアプローチは異なります。同じブティクでも、お客様が明確な目的を持って来店したときと、なんとなく立ち寄った時では、やはりファーストアプローチは異なります。また、顔なじみのお客様か、そうでないかによっても対応は異なります。「いらっしゃいませ」の言葉ひとつをとっても、どのタイミングで、どれぐらい離れた距離から、どの程度の声の大きさ・トーンで声をかけるのかによって、印象は大きく異なります。

 たとえば、入るやいなや真正面の位置から「いらっしゃいませ」の声がかかるのは、迎え撃ちにあったような気になります。また、手に取った商品をファーストアプローチのきっかけにして、あれこれと説明をされるのも外堀を固められて、逃げられなくなりそうでお客様は心地よくありません。その場を離れたくなります。

 理想は、BGMよりも少し大きめの声で、斜めの遠い位置から声がかかり、しかもその店員が「動いている」ことのようです。商品を整理整頓しているなどの作業をしながら、目と手をとめてにっこりと声をかけることです。突っ立ったまま手を前で組み、こちらを凝視して声がかかるのはプレッシャーになります。また、「何かお探しですか」というオープンクエッション(Yes,Noで答えられない質問)をいきなり投げかけるのも愚問です。

 心地よさは、個人によって、また状況によって違うので、成功体験や失敗体験を店舗で話し合ってみるのがいいでしょう。そしてその際に、「いらっしゃいませ」以外の言葉があるか、また「キーワード」をいくつ持っているかなどの意見を出し合うことは、店舗としてのスタイルを決めていくことに通じます。「こんにちは。奥に季節限定商品もありますので是非ご覧になってください」など、ファーストアプローチに続けてキーワード(「セール品」「季節限定商品」「贈答」「売れ筋」など)を工夫します。モノを売ろうとするよりも、まずは人として好感を与え、信頼してもらうための「ファーストアプローチ」の在り方を研究してみましょう。



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