F&Aレポート
F&Aレポート 2015年11月30日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
しない・させない職場のパワー・ハラスメント1 〜パワハラへの理解を深めて、未然に防止しよう
先日、広島市内に勤務する理学療法士の女性が、妊娠・出産を理由に降格されるのは不当である(マタニティ・ハラスメント)と、病院を訴える差し戻し控訴審判決があり、病院は母性を尊重し、職業生活充実の確保を果たすべき義務に違反した過失があったとされ、病院側に175万円の慰謝料の支払い命令が下りました。
この判決の後、偶然ある会合で病院側の管理者とお会いする機会がありましたが、病院側は「負けた」と言い、すっきりしない胸の内を隠し切れない様子でした。一方で、当事者であるこの女性は「勝った」わけです。同じ職場内で働きながら「勝った者」と「負けた者」が存在するというのは、禍根を残すことになるであろうことは容易に想像できました。法の上では一件落着でも、個人の感情となると別です。このことから、マタハラやパワハラは、法で裁く以前に対策があるでしょうし、ハラスメントを未然に防止する方が、健全で正当な改善法、解決法であるということがわかります。
生産性を上げるためにも、ハラスメントの理解を深め人権感覚を高めて、風通しのいい職場にしましょう。
■パワハラ加害者の4つのタイプ
パワハラの手段によって、パワハラ加害者は(1)攻撃型(2)否定型(3)強要型(4)妨害型の4つのタイプに大別できるといいます。ケース事例を通してご紹介します。(株式会社クオレ・シー・キューブ代表取締役 岡田康子氏)
(1)攻撃型:典型的な爆発型パワハラ上司
最近、A所長は朝礼で誰かを標的にして、険しい顔をしながら「ばかやろう。なにやってんだ!」「やる気がないならやめちまえ!」などと大きな声で怒鳴っています。時には持っているファイルで机をバンバン叩き、大きな音を立てるので、部下からは恐れられています。今日は誰が標的になるのだろうと、毎日部下はびくびくしています。
このタイプの加害者は「他の社員たちの前で怒鳴る」「一人だけ呼び出して怒鳴る」「机や壁を叩いて脅す」「肉体的暴力をふるう」など、業務の範疇かどうかに関わらず、被害者に対して直接的に攻撃を行います。周囲の目があるかないかはおかまいなしに、感情的に行動する傾向もあります。朝礼時に部下を指導することも当然あるでしょう。ただ人前で部下を怒ることは、部下をさらし者にし、部下の人格、尊厳を傷つけるということを上司は意識する必要があります。そして、それを繰り返し行ったり、大きな声や音を出して脅す、雇用不安を与える発言をすることはパワハラとして問題になります。
最近、A所長は朝礼で誰かを標的にして、険しい顔をしながら「ばかやろう。なにやってんだ!」「やる気がないならやめちまえ!」などと大きな声で怒鳴っています。時には持っているファイルで机をバンバン叩き、大きな音を立てるので、部下からは恐れられています。今日は誰が標的になるのだろうと、毎日部下はびくびくしています。
(2)否定型:部下の能力・人間力までを否定
Bさんの上司は、仕事の細かいところまでチェックしないと気のすまない人で、Bさんの作成する文書もすべてチェックし、一文字でも間違おうものなら、ねちねちと叱責します。はじめはミスの指摘だけだった指導も、しだいに「何をやらせてもできないやつ」「本当に大学でたの?」「親にどんな教育を受けたの?」などと言うようになりました。これが毎日続くので、Bさんは自信を失い、仕事に集中できなくなっています。
このタイプは「仕事のすべてを否定する」「人格を否定する」「能力を低く評価する」「病人扱いをする」など、その人の存在そのものを軽視し「被害者の職場における存在感を否定する」傾向にあります。陰湿な嫌がらせを通して被害者を追い込む傾向があり、攻撃型と違って職場の雰囲気が一変するような緊張感はありませんが、反対に周囲にはっきりわからないところでジワジワ攻撃するので、被害者は孤立しやすくダメージも大きくなります。ケース例では、部下の業績をチェックすることは業務・指導の範疇だとしても、本人にはどうしようもないことを否定したり、能力を前否定したりすることには大きな問題があります。Bさんの上司は、仕事の細かいところまでチェックしないと気のすまない人で、Bさんの作成する文書もすべてチェックし、一文字でも間違おうものなら、ねちねちと叱責します。はじめはミスの指摘だけだった指導も、しだいに「何をやらせてもできないやつ」「本当に大学でたの?」「親にどんな教育を受けたの?」などと言うようになりました。これが毎日続くので、Bさんは自信を失い、仕事に集中できなくなっています。
★上記の(1)攻撃型:典型的な爆発型パワハラ上司(2)否定型:部下の能力・人間性まで否定のほかに、(3)強要型:自分のやり方を押し付ける(4)妨害型:気に入らない人物のすべてに妨害行為をするなどがありますが(3)(4)については、次回のレポートでご紹介します。パワハラは段階を踏んでエスカレートします。最初は適切な指導であったものが、次第にパワハラに発展していくのです。段階が進行してからでは対策が難しく、ダメージも大きいため早い段階で気づき、防止することが大切です。