F&Aレポート

F&Aレポート 2015年10月30日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

ただのおしゃべりではない「雑談」とは〜情報が集まる「雑談力」

■昔なら、社内のコミュニケーションは、いわゆる“飲みにケーション“で、補えていたかもしれませんが、最近はプライベートな時間を割いてまで上司・先輩と一緒にいるのはイヤという人も少なくないようです。たまに休憩室で一緒になっても皆、スマホに夢中で、話しかけるのもためらわれ、コミュニケーションがはかれないという声も聞きます。同じ職場で顔を合わせていてもコミュニケーションは希薄になりがちで、個人の特性が把握しづらい、信頼関係が築きにくいといった現状もあるようです。

■前回のレポートで、日本が世界に誇る航空会社ANAは「雑談」の習慣があり、その「雑談」こそがヒューマンエラーを防ぎ、チームをチームとして至らしめていることを紹介しました。今回は、「雑談」つながりで、心理学者である多湖輝氏の「雑談力」から、雑談をただのおしゃべりに終わらせないコツや考え方をご紹介します。(人の心をつかむ「雑談力」情報が集まる「雑談力」新講社

1.空気感がないメールやツイートは「雑談」にならない
 メールやツイートで雑談ができるだろうか。答えはノーと言わなければならないだろう。どんなにIT技術が進んでも、顔を突き合わさなければ雑談は成立しない。「会話をするような」ことは可能でも、そこには息づかいも、たたずまいなど体から発せられるメッセージもない。単なる情報伝達や上意下達ならインターネットに勝る道具はないだろう。場所も時も選ばず、瞬時に伝えることができる。

 だが、創造的なアイデアを生み出す「雑談会議」に使えるかどうかとなると、これは恐らくムリであろう。

 テレビ会議というものがある。複数の人間がテレビで向かい合って雑談しても、普通の雑談とは感じのちがったものになってしまう。なぜなら、そこには「座」の空気、雰囲気といったものが形成されないからである。

 例えばギターという楽器がある。弦を抑えて「ミ」の音を鳴らすと、別の「ミ」の開放源も同じように振動を始める。“共鳴”である。これは空気があるから起こる現象である。雑談での盛り上がりというのは、これと同じで座の空気が共鳴し合うことで起こっている。

創造的な雑談には、このような生の雰囲気が欠かせない。そうした空気、つまり人間くささの中で何かが生まれてくる。これをネットやテレビ会議に期待するのは限界があると言わざるをえないだろう。

2.「雑談」を盛り上げる六色法
 オーケストラのつくり出すハーモニーが素晴らしいのは、それぞれの楽器が、それぞれの役割を果たしているからである。強い野球チームは、それぞれの選手がそれぞれの役割を果たしているから強いのである。雑談が実りあるものになるかどうかも、これと関係がある。雑談の効用を高めるには、そこにいる人がそれぞれの役割を認識し、その上に立ってのびのびと物を言うことが大切である。

 雑談における役割は六つある。まず六人のメンバーが、それぞれに違った色の帽子をかぶってミーティングに臨んでいる光景を想像していただきたい。

  1. 「白」の帽子  彼は客観的なデータを提出する役割を担っている
  2. 「赤」の帽子  「好き」「嫌い」といった感情的な意見をぶつける
  3. 「黄」の帽子  肯定論者で「これはいい」といったプラス意見ばかり並べる
  4. 「黒」の帽子  反対論者「面白くない」「高過ぎる」といった反対意見を述べる
  5. 「緑」の帽子  クリエイティブな発想によって建設的な意見を述べる
  6. 「青」の帽子  全体をまとめたり、整理したり、方向性を与える役割
 ためになる雑談を行うには最低六人のメンバーが必要になる。ただ実際には「白」と「緑」の帽子の能力がポイントになる。だからここを複数にして10人ぐらいというのが、雑談の効果を高めるために理想的な人数であるといえる。

 メンバーが三、四人という少数のときには、次の方法がお勧めである。

 各人がそれぞれに役割を果たすのではなく、全員が同時に一つの役割を果たすのである。まずリーダーが「白」の帽子をかぶれば、メンバー全員の役割も白となり、みんなが客観的なデータを出す。リーダーが「黄」の帽子をかぶれば、全員が肯定論者になってプラス意見を述べる。これだと漠然と意見を出し合う雑談よりは、はるかに議論が活性化する。