F&Aレポート

F&Aレポート 2015年10月20日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

「TEAM」+「人財」+「雑談」=ヒューマンエラーを防ぐ ANAが大切にしている習慣 雑談は「暗黙知」の宝庫

 3年連続SKYTRAXランキングで、日本唯一の「5スター」を獲得し、2007〜2013年にはエアライン・オブ・ザ・イヤーを受賞した、日本が世界に誇る航空会社ANA。

 世界トップクラスと評されるこの会社には、社員みんなが大切にしている「雑談」の習慣があるといいます。(ANAが大切にしている習慣 ANAビジネスソリューション著 扶桑社新書

ANAには、社員みんなが大切にしている習慣があります。
「会社」ではなく、ひとつの「TEAM」として考え、行動する習慣。
「人材」を「人財」と考える習慣。
雑談もコミュニケーションの一部として奨励する習慣。
すべての部署の人間が、お客様をもてなす気持ちを持つ習慣。
そして、それらを行うことが、ヒューマンエラーを防ぎ、安全、定時で快適な運航を提供できると考える習慣。

これは規則や制度ではありません。
習慣化されているからこそ、機能しているのです。

■整備環境におけるエラーを誘発する12の要因と3つの要素
  1. コミュニケーションの欠如
  2. 自己過信、思い込み
  3. 知識の不足
  4. 注意逸脱、気配り
  5. チームワークの不足
  6. 疲労
  7. 人的資源の不備
  8. 外部の圧力
  9. 独断
  10. ストレス
  11. 状況認識の欠如
  12. 規範、集団の行動様式
 これらのエラー要因は、重要な3要素にまとめることができます。コミュニケーション(情報伝達)、リレーションシップ(対人関係)、リーダーシップ(影響力)です。チームマネジメントをしていく上で念頭に置いておけば、いいチームをつくることができます。

■雑談は「暗黙知」の宝庫
 誰に対してもいつでも何でも話し合う、というのは、実は航空業界では共通の習慣です。

 パイロットの世界には「ハンガートーク」という言葉がありますが、これはハンガー、つまり飛行機の格納庫でパイロット同士が雑談や無駄話に花を咲かせるという意味です。

 帆船の船員には「風待ち潮待ち」という言葉があったそうですが、航空会社や空軍のパイロットは、天候の回復待ちをするのが普通のことだったのです。

 そうした場合、天候が回復するまでの待ち時間に誰ともなく雑談し、自然に情報交換をします。どこそこの空港はこの季節は横風が強いから気をつけろ、という操縦時の注意や危険な目に遭った体験、さらにどこそこの空港のレストランは何がうまいかなど、暇にまかせて多種多様な情報をやりとりする、というわけです。

 整備士の作業の割当ては、担当する便の点検整備が終わり、次の到着便の点検整備をするまでは少し時間を空けてあります。この時間に、ベテラン整備士は若い整備士に質問をしてみたり、故障の経験談をしたり新しい機種のことなどを話し、若い整備士はさまざまな話の中で、知識を深めていきます。一人の情報では足りない部分を、多種多様な人間が集まることでよりパーフェクトに近づけていく事例のひとつです。

 「暗黙知」という言葉があります。これは、経験や勘に基づく知識のことで、個人はこれを言葉にされていない状態で持っているとされています。第三者と知識を共有することにより知識が蓄積されます。この知識はすぐには役に立たないかもしれません。しかし、これらは自分が未経験の事態に遭遇したときに役立つ「暗黙知」なのです。

■雑談の「場」がないならつくり出す
 そもそも「雑談」や「無駄話」というように、えてしてこうした会話やコミュニケーションを、会社は「雑」だとか「ムダ」と切り捨てがちです。しかし、チームにとって、そうした「場」は絶対に必要だと思います。「無駄話」を「ムダ」にしてしまうことのないよう「暗黙知」として蓄えることです。もしも「場」がないのならつくればいいのです。最近では喫煙者が減りつつありますが、喫煙ルームがそうした「場」になるかもしれません。自動販売機があれば、その近くに小さなテーブルと椅子を置いてもいいでしょう。大切なのは「場」の数を少なくすることです。必然的に交流が深まるからです。「風通しのいい職場」誰でも自由にものが言える雰囲気は、こうした環境から生まれます。