F&Aレポート
F&Aレポート 2015年9月20日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
プロと素人の分かれ目〜徒然草に学ぶ
「器用な素人」とその道の「プロ」の違いは何でしょう。徒然草によると、単に生業にしているかどうかということだけでなく、「最高の技量を備えるとともに、最悪のシュミレーションができているかどうか」ということのようです。(ヘタな人生論より徒然草 荻野文子著)
吉田と申す馬乗りの名人が申しましたことは、「どの馬もみな気の強いものである。人間の力では、馬と張り合うことなどできないと知っておかなければならない。乗ろうとする馬を、まずよく見て、強いところ弱いところを知っておかなければならない。次に、轡(くつわ)や鞍などの馬具に、危ないところがありはしないかと調べて、気にかかるところがあったら、その馬を走らせてはならない。この用心を忘れないのを馬乗りと申すのである。これが乗馬の秘訣である」と申しました。(第一八六段)
会社でプロジェクトを立ち上げる場合も、儲かる計算ばかりしているのはアマチュア経営者。社員の士気を高めるために最高値を目標に掲げはしても、心の中では失敗したときのリスクを計算し、それをカバーする方法を考えていてこそ、経営のプロなのだそうです。主婦業なら、夫が病気をしたり、リストラされたりしても、慌てずにすむように蓄えをしている人が家計のやりくり名人だとか。いっぽう素人は、根拠もないのに自分の最高値を過信して、無謀極まりない行動をするのだそうです。
どの道であっても専門家というものは、たとえ未熟であったとしても、熟練の素人に比べたときに、必ず勝っている。それは、いつも油断なく慎重で軽率なことをしないのと、ただただ勝手気ままにするのとは違うからである。
芸能や仕事だけでなく、一般の言動や心構えなどでも、不器用で慎重にしているのは成功のもとである。逆に、器用で勝手気ままなのは、失敗のもとだ。(第一八七段)
「完璧性」とは、首尾よく満点を取ることではなく、危機を回避する方法を考え出す慎重さを有しているということです。どんな事柄でも「器用な素人」が自分勝手に判断するほど危険なことはない。それなら不器用でいいから、慎重な方が良いと、日本三大随筆である「徒然草」の中で兼好先生は解いています。鎌倉時代末期に書かれた書物でありながら今に生きる名言ですね。
芸能や仕事だけでなく、一般の言動や心構えなどでも、不器用で慎重にしているのは成功のもとである。逆に、器用で勝手気ままなのは、失敗のもとだ。(第一八七段)