F&Aレポート

F&Aレポート 2015年8月30日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

パワー・ハラスメント2

<パワハラの定義>職場において、職務上の地位や影響力に基づき、相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、その人やその周囲の人に身体的・精神的な苦痛を与え、その就業環境を悪化させること。
<なぜ、パワハラが問題なのか>
● 心身の健康を害する ●職場風土を悪化させて士気が低下する
●退職者の増加と有能な人材が流出する ●企業評価を低下させ信用が失墜する
1.「それはパワハラですか?」〜パワハラかどうかを見極める基準

(1)本来の業務の範疇を越えている
 仕事上なんらかのノルマが課せられるのは職務の範疇です。しかし、度を超えたり、明らかに達成不可能な成果を求めるのはパワハラ行為と見なされます。また、業務とは関係ない個人的なこと(例:ライフスタイル、学歴、家族のことなど)を口に出して、個人攻撃と思える言動を繰り返すのもパワハラです。

(2)継続的に行う
ほとんどのパワハラは、数週間から数ヶ月、また数年にわたって延々と執拗に行為が続けられます。そのため、仕事上のミスで、その場で一言「バカ!アホ!」と注意されるだけならパワハラとは言えません。しかし、たった一度でも違法行為の強制や人格否定、差別的な発言や暴力をふるえば、それはパワハラです。

(3)働く環境の悪化、雇用不安
パワハラの加害者は、本人が意識しているかどうかに関わらず、被害者をおとしめたい、困らせたい、辞めさせたいなど、何らかの意図を持っていることが多いです。その結果、働く環境が悪化し、雇用不安が起きています。

2.「職場のハラスメント」に当たる言動を受けたときの対応方法

(1)記録と整理
 「職場のハラスメント」に当たる言動を受けたときには、対処を求めるためにも、その言動を記録することが大切です(発言は録音するなど)。日時、場所、加害者、具体的な言動の内容、周囲の状況(周囲に誰がいたかなど)、相談した人があればその人と内容などを書き留めます。ポイントは「客観的な事実」と、「それをどう感じたか(主観)」を分けて記述すること。事後でも覚えている範囲で記録します。記録をもとに気持ちを整理し、自分が求めることをはっきりさせます。(●加害者に何を要求するのか―言動の中止、謝罪、慰謝料など●使用者に何を要求するのか―言動中止の措置、加害者からの謝罪を促す措置、加害者の処分、使用者側としての謝罪、使用者からの慰謝料、人事異動、今後の防止策)

(2)相手に対する意思表示
 自分にとって苦痛・辛い言動を受けた場合は相手に伝えること。苦痛に思っていることが相手に伝わっていない場合や、受け入れられていると誤解されている場合もあります。他方、相手との人間関係が悪化する、恥ずかしい、相手からの仕返しが怖いなどがあり、「NO!」の意思表示ができなくても自分を責める必要はありません。明確に「NO!」の意思表示をする場合は、受けた言動が「個人の名誉感情などの人格権を侵害する不法行為」にあたるとして、口頭または書面ではっきりと抗議する、謝罪を求めるなどを行います。場合によっては、内容証明郵便等でその言動の中止を求め、中止されない場合には法的手段に訴える旨を意思表示することも考えられます。

(3)相談する
 一人で悩まないで、公的な相談窓口や、信頼できる身近な人に相談を。特に、信頼できる上司が存在する場合、相談をして適切な対処を求めます。職場の問題として取り上げてもらうためには、企業内の相談・苦情窓口に申し出ることが道筋です。 (均等法では、相談対応のための窓口をあらかじめ定めることが事業主に義務付けられている)