F&Aレポート
F&Aレポート 2015年1月20日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
おすすめの一冊「女子の武士道」〜女性の品格を磨く 1
〜祖母が逆境を生き抜くことができたのは、いかなる艱難辛苦にも平常心で臨むという勇猛果敢な武士道が芯にあったからにほかなりません〜武士の娘だった「祖母の言葉五十五」をまとめた、女性の品格を磨く深い知恵…石川真理子著 致知出版社の「女子の武士道」は賢く生きる覚悟を授けてくれる一冊です。女性のキャリアデザイン(自身の人生と仕事をどのように構築していくかを描く)という視点においても、非常に興味深く示唆に富んでいます。
1.道理に従ってためらわずに決断する 〜おなごがでたらめになると世の中がでたらめになる
新渡戸稲造(にとべいなぞう)は武士道の基本精神の柱として「義」を掲げ、「義は自分の身の施し方を道理に従ってためらわずに決断する力である」と述べました。
「義」とは、簡潔にいえば、不正や卑劣な行動をみずから禁じ、死をも恐れない正義を遂行する精神である。すなわち「義」とは打算や損得のない人間としての正しい道、「正義」のことである。「道義」「節義」もこれにあたる(『武士道』PHP文庫)「義」は人として守るべき道徳律の基本を成すもの、人間の体でいえば背骨にあたるものとされます。
では、「女性」の立場を踏まえた、「おなごとしての義」とはなんでしょうか。簡潔にいえば、男性と一致協力して繁栄をもたらしていくことでしょう。家を治め守り抜くのはもちろん社会で働くにしても、男性と対立するのではなく、互いに補い合い発展させることです。女性だからこそ果たすことのできる役割があるのです。
家にあっては大黒柱である夫をしっかり支え、栄養たっぷりの良質な農作物のようにいきいきとした子どもを育てていく。そのためには、女性ならではのしなやかな強さ、大らかな愛情が必要であることは、今も昔も変わらないのではないでしょうか。
仕事においても女性特有の細やかさや柔軟さ、いざという時は男性以上に覚悟を持って事に当たる強さこそが生かされていくはずです。
「おなごがでたらめになると世の中がでたらめになるぞえ」という祖父のことばは、私にとっては耳が痛くてたまりません。それゆえに、今一度、日本の婦道、強く大らかでやさしい女性らしい心というものを考え直してみたいと思うのです。
2.人に認められることよりも、自分で納得できるかが問題
人は誰でも「認められたい」と思うものです。
なぜ仕事で成功したいのか、その理由を突き詰めていけば、「認められたい」という思いに行きつくことでしょう。
それは悪いことではありません。しかし、常に基準が他者に置かれてばかりいると、人から認められなかった場合に、さまざまな不満が生じてきてしまいます。
祖母は自分を基準にすることの大切さを説きました。自分が納得できる仕事ぶりをしているかどうかということの方が、よほど重要だというのです。
「人から認めてもらいたいという思いをバネにして、良い仕事を行う者ももちろんおります。けれど、いつでも誰かが認めてくれるとは限りませんからの、いつかは心が満たされぬようになるものだえ。その点、誰がみとめてくれようとも自分が納得できないのであれば評価せぬ、という姿勢は留まるところを知りませぬ。そのような思いで仕事に向かっている者は、どこまでも上達していくものですよ」
祖母は認めてもらおうという思いから丁寧な仕事をしているわけではありませんでした。プロである以上、出来具合はお客様よりもわかるものです。たいして良い出来ではないのがわかっているのに素知らぬ顔をしているなどということは、祖母にしてみれば許せないことだったのでしょう。
それは自分に嘘をつくことになるからです。
「上出来ではないものをわかっていて、きちんと仕上げましたなどという顔をしてしまうのは、お客様にはもちろん自分をもごまかしていることになる。逆に、もしお客様が仕事の丁寧さに気づかなかったとしても、自分で胸を張っておれるような出来具合であれば、そのほうがずっと真実だし誇らしいというもの。それに、ちゃんとしたものというのは長く着ていても崩れないから、使っているうちに必ずできの良さがわかってくるものですよ」
君子は能なきことを病(うれ)う。人の己を知らざることを病(うれ)えず。/君子は(自分に)才能のないことを気にして、人が自分を知ってくれないことなど気にかけない自分を納得させるということは、案外難しいものです。しかし、そうした努力が才能を開花させていくことになるのでしょう。
働く女性の武士道「徳は本なり、財は末なり」、「才能を世のために使うのが仕事」、「誇りをもって事に仕える」など、人としての心得、女性としての在り方について考えさせられる一冊です。読んだ後に背筋がピンと伸びるそんな本です。次回に続きます。
[Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.]