F&Aレポート
F&Aレポート 2014年10月20日号 Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.
和室に培われた日本人の感性
日本人の心や礼節の尊さを指導されている森日和さんから、面白いお話を伺いました。「和室」で育まれた日本人の感性についてです。最近の新しいマンションには、和室のないところも珍しくないのですが、森さんのお話を伺うと、和室の良さや意味、価値があらためて感じられます。以下にご紹介させていただきます。
和室から学べることのひとつに座ってみる景色の美しさがあります。目の高さが変われば見える世界が違うということです。雪見障子などはまさにそうです。座った視線から眺める外の景色…。私たちはいま、高い目線ばかりからものを見る生活様式となり、いろいろな目線からものを見る機会を失いつつあります。同じものであっても人は違うふうに見ているということに、和室で座ってみる景色の感動から気づかせてもらうのです。
座ること、正座すること、これはアジア特有の文化で欧米にはありません。そして、現代人は和室に座らないから物が見えてこないということもあるのでしょう。
和室ではすり足ですが、洋室ではかかとから着地して蹴って歩きます。その場合、目線は高い位置にあるので、足の裏がどうかまでは気にせずに済みます。
一方、和室の場合、目線は低く下になりますから、足の裏もすぐに見えてしまいます。すり足とは、足の裏を見せない心遣いなのです。
さらに、今は西洋の設えがほとんどですので、プライバシーを守る家屋構造になっています。ところが日本はもともと、つい立ての文化なのです。つい立て、障子、襖、何とも心もとないプライバシーです。その心もとないプライバシーさえ、それぞれ個々の礼儀に委ねられているのです。たとえば、襖一枚隔てていても欄間からは音が筒抜けです。だから、聞いてはならない話は聞かないようにする。聞こえても聞かない。それは、個々の思いやりでありわきまえなのです。生活様式が変わり、そんな日本人らいい美学が今、失われつつあるのではないでしょうか。(美し国 平成26年春号より抜粋)
[Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.]