F&Aレポート
自衛隊流行動術に学ぶ 伝導効率を高めるコミュニケーション・マネジメント
■ 私は警察学校で授業をすることがあるが、彼らの挨拶にはいつも敬服する。大きな声で、背筋を伸ばして、メリハリのあるお辞儀をする。全員がいつでもそんな挨拶ができる。これは特別な才能が必要なわけではない。ただ訓練を重ねた結果である。彼らの中には、数ヶ月前までは普通の高校生だったという者もいる。もちろん、高校生の頃にはそんな挨拶などできるはずもない。しかし、入校してから鍛えられるのだ。この挨拶があるから統制がとれる。この挨拶が、いざというときの判断やチームワークに影響するのだ。
■ 「自衛隊流行動術」では「喚呼操縦(かんこそうじゅう)」といい、交差点で右折をするとき「前方信号よし」「右よし」「左よし」「右回りよし」と叫んで、この4つをクリアしなければ右折を始めない。声を出すことによって、もう一人の自分を正す。もう一人の自分とは、疲れている自分だったり、眠気をもよおしている自分。工事現場や電車の運転でやっているこの方法は、まったく自衛隊のやり方そのもので、自衛隊発足60年の歴史から自衛隊流のやり方が民間に伝わったものだそうだ。
■ 自衛隊の教育とは、有事の瀬戸際で何をすべきかを教える機能的で実践的な指導である。その「生きるか死ぬか」の狭間から生まれた発想術・行動術は逆境に生きるビジネスマンに役立つヒントがありそうだ。(「どんな逆境にも負けない40の教え 自衛隊の行動術」)
1.挨拶の5段階と具体例 〜挨拶、発見、関心、激励、助力
挨拶は単なるマナーや習慣ではなく、チームワークを作るための大切な手段。
5段階の手順を頭にいれれば良い人間関係ができる。
★挨拶の5段階と具体例:チーム中で互いに声をかけあう
- 挨拶 「おはようございます」「お疲れさまでした」
- 発見 「顔色が悪いようだけど、どうかした?」
- 関心 「いつもよりよくできたね」
- 激励 「あと少しだよ!頑張れ」
- 助力 「こうすれば簡単にできるよ」
- 挨拶 → 相手と取り交わす礼やことば
- 発見 → いつもと違う相手に気づく
- 関心 → 注意の目を向ける
- 激励 → 元気づける
- 助力 → 助言したり、手を貸す
人は自己防衛のため本能的に声を発するときがある。それは、びっくりしたときに自然に出る声だ。声を出すことによってショックを和らげ心臓への負担を軽減しているのだ。
声も出すことができずただ呆然としているような大きなショックを受けたときは、意識的に声を出すと我に帰ることができる。
やらなければならないとわかっていても、なかなかやる気持ちが沸いてこないことがある。こんなときは声を出してモチベーションアップにつなげるといい。その基本が「あいさつ」だ。復唱、復命も大きな声で行う。復唱は伝達事項などの情報を受けたときに繰り返していうこと。復命は命令を受けたときに繰り返して自分でいうことだ。繰り返すことは確認と理解を表す意味もあるが、特に大きな声での復命は、命令を実行するぞという決意の表れにもなる。自らモチベーションをあげるには、声に出すことだ。
3.声に出す「ちょっと待ったコール」で即決、即座
話の途中でわかならいことがあったら「ちょっと待って」とその場で疑問を解決すれば二度手間にならない
「ちょっと待ったコール」とは、会議や仕事のやりとりの時に相手をさえぎって、質問や助言をすること。会議なら初めに会議のルールとして、いつでもどこでも「ちょっと待ったコール」をするよう要求する。「わからないことがあればすぐ質問せよ。わからないことをそのままにしておかれるほうが、話のノリを砕かれるより、後の被害が大きくなるから。会議の理解のつまずきになることは即時・その場で解消したい」と説明する。
「ちょっとこの場の雰囲気では質問しにくい」と、先送りしているうちに、その問題を忘れることがある。「いつかしよう」は「いつまでもしない」につながりがちだ。
人が仕事や問題解決を先送りしてしまう理由は、今やらなくても支障がない、ということに尽きる。「今、ここ」と一期一会の緊張感がない人はこの「先送り族」に仲間入りをして、せっかくの学びの機会を失う。先送りの最大の問題点は、先送りしている時間が浪費されて、課題に対する解決策の選択肢が刻々と少なくなっていくことだ。