F&Aレポート

F&Aレポート 2013年6月20日号     Presented by Aquarius Intelligence Institute Inc.

わかりにくい=面白くない「話しことば」 話しことばは、文章よりわかりやすく人に感銘を与えるものである 福沢諭吉

「演説とは英語にて"スピイチ"と言い、大勢の人を会して説を述べ、席上にて我思うところを人に伝うるの法なり。文章にて記せばさまで意味なき事にても、言葉をもって述ぶればこれを了解すること易くして人を感ぜしむるものあり。福沢諭吉 学問のすすめ」
■ 明治初期、福沢諭吉がスピーチを日本で初めて紹介したとき、「欧米では人が集まれば日ごろの持論やその場の思いつきを述べる習慣がある、話しことばは、文章よりもわかりやすく人に感銘を与えるものである」と書いています。ところが、スピーチが日本に上陸して100年以上が経つ現在も、日本人の「スピーチ苦手意識」は根強く、話しことばになると文章よりもわかりにくいという人もいます。今回は、話をわかりにくくさせる、「あいまいことば」「漢語」「同音異義語」について特集します。

1.「あいまいことば」を無意識のうちに使っていませんか?
「まあ、いちおう、こちらのほうなんですけど、とりあえず、さまざまありまして、、、」

 会議の発表などで、言い訳やあいまいなことばを連発している人はいませんか?そんな人は、自信のなさや、やる気のなさがことばの端々に表れているように感じられます。
 「この商品なんですけど、まあ、いちおう、特徴のほうなんですけど、デザインとかが変わっていまして、ふつうにオシャレな感じというか、値段のほうも少々お安くなっていたりして、けっこう注文とかいただいたりしていまして、、、」
 文字にすると、ダラダラ話している感じがよくわかりますが、話している本人は気づかないのです。「この商品なんですけど」ではなく、「この商品の特徴は」と言い切れば、「○○です」と言いやすくなります。伝える情報を整理できていないため、あいまいな表現になるのです。以下のことばを禁句にするだけでも、すっきりとしたメッセージになります。

排除したい"あいまいことば"
「ちょっと」「少し」「少々」「多少」→どのぐらいの時間、距離、程度なの?
「まあ」「いちおう」「とりあえず」「なんとか」→態度を明確にしましょう
「いずれ」「そのうち」「あとで」「のちほど」→いつ?何時間後?何日後?
「かなり」「けっこう」「相当」「だいたい」「おおむね」→どのぐらい?どの程度?
「いろいろ」「たくさん」「さまざま」→何が、どれくらい?
「など」「とか」「等々」→具体的に実例を挙げて
2.男性に多い"漢語""文語"好き
「本日」「明後日(みょうごにち)」「一昨日(いっさくじつ)」「昨年(さくねん)」

「本日はご多用の折り、我が社のために多数ご来場賜り、、、」などと始まると、会場は硬い雰囲気になります。これはなぜか、男性に多く見受けられます。もしかしたら、硬い表現=丁寧、知的、誠実というようなイメージがあるのかもしれませんが、聴き手の気持ちまで硬くしてしまいます。これは、"書き言葉"に頼った原稿を作ることも原因の一つです。
"書き言葉"は、目で理解することば。"はなしことば"は、耳で理解することばです。聴き手が耳で聴いて素直に理解できることば選びを心がけましょう。
「今日は、お忙しい中、私どものために多くの方にお越しいただき、、、」という口語の方が、自然体で聴き手も受け入れやすくなります。また、自然体だから失礼にあたるということもありません。大切なのは、聴き手によりわかりやすい表現を心がけるということです。

3.耳にまぎらわしい同音異義語、類音語
「私立/市立」「講演会/後援会」「試案/私案」「家庭/仮定」「医療/衣料」

 日本語は、「同音異義語」が多いのが特徴です。文字なら区別がつきますが、耳で聴くことばでは区別がつきにくいので、「ワタクシりつ」「私的な案」などの言い換えや補足が必要です。また、発音が似ていてまぎらわしい「類音語」にも注意しましょう。
「○カヤマ県です」「え?岡山県?和歌山県?」とか、「カナザワ/カナガワ」「健康に注意/天候に注意」「さぬきうどん/たぬきうどん」「一日に千人/一日二千人」「足/端」
「病院/美容院」「いち/しち」「EU/金融」「起こる/誇る」「預かって/扱って」
「位置/基地」「収容/終了」「使用/主要」「指名される/示される」など、明瞭の発音をするとともに、事前チェックが必要です。


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